君の指輪と海のカフェ

なのに、その細い指の感触だけが、細胞の一つ一つに刻み込まれているような、奇妙な懐かしさに包まれまれる。

「終天ともに。……そう誓い合ったんです。だから、もし明日あなたが僕を忘れてしまっても、この指がその温度を覚えています。僕が、何度でも思い出させますから」

湊がその指先に、誓いのキスを落とすかのようにそっと触れ直すと、美波の瞳から一筋の涙がこぼれ、彼
女の膝の上のノートを濡らした。

「……はい。私、明日もここに来ます。この指が、あなたを覚えている気がするから」

沈みゆく夕陽が、彼女の何もついていないはずの薬指を一瞬、黄金色の輪のように輝かせた。


それは、記憶を失い続ける彼女と、記憶を守り続ける彼を結ぶ、世界でたった一つの、消えない絆だった。