キャリア警察官の旦那様はサイバー捜査員の私を溺愛しつくす

 桜春は下腹をさすり、ベッドでもぞもぞとする。
「うへー、お腹痛い」
 女性の体調がこうなった時、どうするべきか桜祐は知っている。
「しばらく家事は任せてください。もうすぐ昼ですね」
 祐は料理の準備を始めた。
 炊飯器には米飯が炊けており、卵も一パックある。フライパンをふたつIHに並べる。先に下拵えとして、鶏肉と玉ねぎを切っておいた。
 マッシュルームがない。しいたけで代用するかと祐は迷案を出す。
 まず片方のフライパンにはオリーブオイルを垂らす。まな板に乗せたにんにくを包丁の側面で潰してから切る。にんにくを入れ、匂いが漂う。具材を入れ、炒める。顆粒コンソメを入れ、米飯を入れる。切るように木べらで混ぜ、トマトソースを……いや、そんな洒落たものなかった。ケチャップを入れる。いや待て、加減がわからない。適量と感じたところで止める。
 なんとかチキンライスができた。
 春がひょこっと顔を出す。
「何作ってくれてるの? わ、オムライスだ」
「ここからが難しいのですが、卵です」
「あーね」
「包みたいんですよ」
「難易度高いよ?」
 かえって祐の闘志に火がついてしまった。
 卵を溶いた上で、もう片方のフライパンにバターを溶かし、卵ではなくフライパンのバターに塩を振りかける。
 卵を流し込む。当然弱火だ。
 焼きながら軽く掻き回し固まってきたところで、チキンライスを卵に乗せて、くるんで巻いていく。端が余ったのはご愛嬌。
 同じ要領でもう1人分つくり、ミニトマトを乗せる。ケチャップは描かず普通に絞った。
 春がテーブルにつく。
 沸かしたお湯で紅茶を淹れ、市販のコーンポタージュを溶いた。
「いただきます」
「いただきます」
 おいしそうに頬張る春を見て微笑む祐。幸せの形がそこにはあった……
 ……食後にはココアを淹れ、ソファーに並んで座り、お揃いのマグカップで飲んだ。 
 春が祐にもたれかかり、祐が頭を撫でる。
 桜祐と桜春。ふたりはそれぞれ警視と警部の階級を持つ公安警察であるが、私生活は砂糖菓子のように甘かった。