神社の近くにある、河川敷から少しズレた場所にあるこの公園。
さくらは一人そこに立ち寄って、ブランコに乗り、揺られながら空を見ていた。
「……あぁ。花火綺麗だなぁ……」
この空を一緒に見たい人が居た。
無意識のうちに、自分の中に存在していた。
それが誰か。もう分かっていた。何故涙を流し、泣いたのか。その涙の意味と、気持ちの名前に。
本当は分かっていたんだ。ただ、分かろうとしなかった。いや、認めようとしなかったんだ。
「今頃……りゅうくんとみうちゃんは……一緒に……」
そう思い耽ながら、空に浮かぶ、円を描く火の花を見上げる。
すると、公園の出入り口付近で、息を切らした声が聞こえて来る。咄嗟にその方向へ視線を向けた。
肩を動かす勢いで息を切らし、大量の汗を流している人物が居る。その人物はりゅうのすけだった。
「ハァハァッッ!! ハァハァッツ!! やっぱりッッ!! ここやったかッッ!!」
「……え……? りゅう……くん……?」
「……ハアハアッツ!! ちょっ!! ハァハァッツ!! ちょっと!! タンマ!! ハァハァ!! ごめん!! 待って!!」
「……なんでそんなに疲れてるの……?」
りゅうのすけは、近くにあったベンチに腰掛けて、道中で買った飲み物を勢い良く飲みながら、一休みする。
さくらも、その隣にちょこんと座り込む。
しばらくして、りゅうのすけは落ち着いた。
さくらは、気まずくなりながら声を掛ける。
「……どうしてりゅうくんがここに……?」
「ふぅーー……え? ああ。なんかどっか行ったって聞いて。探した。そんでやっと見つけた」
「……探した……って……どうしてここが分かったの……?」
「あーっと、一人でどっか行く、人混みウザくなる、誰もいない所に行きたくなる、花火大会の会場の神社からで一番近かったこの公園に行き着いた」
「それまでに神社中走り回ったお陰でめちゃくちゃ疲れたけど……つーか人混みエグすぎだろ……」
「え……なんで……そこまでして……」
「……なんでってそりゃ……心配だからに決まってんだろ。なんかあったのか? あったからこんなとこ来てんだろ」
「……いや、そんな事より、いいの? こんなとこに居て。みうちゃんのとこ戻ってあげなよ…………」
「なんでみーちゃんとこ戻んねーといけねーんだよ」
「……え、だっ、だって……」
「なんだよ」
「……み、みうちゃんと……つ、付き合う事になったんでしょう……?」
「……は? なんで? なんでそうなんの?」
「……え、だって……だって……だって……」
「……付き合わねーよ」
「……え、なんで……?」
「なんでもどうも、俺がみーちゃんに付き合えないって言ったから……っつーかオメー、さっきの見てたのか?」
「……え、付き合えない……って……なんで……」
自然と嬉しく思ってしまった。さっきまで痛かった、重たかった心が、なんだか軽くなった気がした。
「……うん、付き合えないって言った……俺、みーちゃんの事好きだけど、そういう好きじゃねーからって……それに他に好きな人居るからって……」
軽くなった気がした心に、また重苦しくなった気がする。
(そうだよ……ね……りゅうくんだって……好きな人くらい……居るよね……)
「……俺、さくちゃんが好きやから」
ひゅぅうぅうぅ……ドゥォパァアァアァンンッッ!!
りゅうのすけの背景の空にまた大きな火の花が
舞い上がった。
大きな破裂音と共に、綺麗で美しい火の花が漆黒の夜空に描かれている。
その火の花はアングレカムの花の形を彩っていた。
さくらの紅く火照る顔が明るく照らされる。
「……あ……え…………? ……今、な……なんて……?」
「だぁーーっっ! もう……こういうの慣れてねーんだよ…………好きって言ったんだよ……悪いか!」
「うぁあぁぁあぁ……うぅうぅうゔゔぅうぅ……」
「わわっ、何泣いてんだよ……!」
「……ごめん……うぅう……嬉しくて……」
「……う、嬉しいならよかったよ……」
「……さくらも……さくらも……りゅうくんが……りゅうのすけくんが……大好きだから..........!!」
「……こんなに人に好きって言われて、心底嬉しいって思えたのは、人生で初めてかも知れん」
「……さくらも……」
夜空に連発で咲く、火の花が彼らを見守っている最中りゅうのすけは、泣いているさくらの涙を優しく拭い取り、優しく抱擁を交わした。
