One year left -家族ごっこ-

「なんで?」


「県外に就職する予定だから」


「どこ?」


「まだ決めてない。でも遠いところだよ」


「働くなら地元でいいじゃん」


「ううん。私はもう地元にはいない」


風がだんだん強くなってきた。


桜の木々も揺れだす。


「言ったでしょ?お母さんの幸せを見届けたいって」


碧くんは何も言わない。


「お母さんの幸せを見届けて、……私は消えるの」


彼の手が私の頬に触れた。


「なんで、泣いてるの?」


言われるまで、自分が泣いていることに気づかなかった。


「分からない」


その手に、自分の手を重ねる。


「碧くん、手が冷たいね。帰ろう」


帰り道、彼は何も聞いてこなかった。