One year left -家族ごっこ-

「私に見せるために連れてきたの?」


「そうだよ」


「まだ桜咲いてたんだね」


「八重桜。遅咲きだから今が満開」


「綺麗……」


桜の一つ一つが柔らかな照明に照らされ、花びらがきらめいている。


「俺はあんたのほうが綺麗だと思うけど」


ぽつりと碧くんが言った。


また冗談が始まったと、呆れた顔で碧くんを見ると、彼は私ではなく、まっすぐに桜を眺めていた。


その横顔にライトの光が反射して、頬が淡いピンク色に見える。


私は、また桜に視線を戻した。


「連れてきてくれてありがとう」


「……別に」


「忘れないね」


この光景を目に焼き付ける。


「そんなに気に入ったなら、来年も見にくればいいだろ」


ぶわっと風が舞って、私の髪がさらわれる。


碧くんの指が、流れる髪をすくって、私の耳へとかけた。


目と目が合う。


私は少し困って、そして笑った。


「来年の今頃は、もうここにいないから」