One year left -家族ごっこ-

後ろにいる碧くんの気配が急に私に近づくのを感じて、反射的に避ける。


「あんたは俺にお願いばかりだな」


いつもよりも低い声だった。


抱きつかれそうなほど近い。


ぞっとして、サドルから腰を浮かす。


「ごめん。これが最後だから」


逃げたい気持ちを押し殺して、碧くんのほうを見た。


「いつも表では母親の機嫌とって、裏では隠し事してるの?」


ドクンと心臓が大きく脈打つ。


私の弱い部分をえぐり取られたような気がした。


痛みに耐えながら「そうだよ」と認める。


「お母さんの前でずっと良い子にしてた。ダンスをやりたいことすら、言い出せなかった」


夕紗にもこんな胸の内を話したことないのに。


碧くんには、なぜこんなにも簡単に本音が出てしまうんだろう。


情けなくてうなだれた。