One year left -家族ごっこ-

彼は「……言っていい?」と、少し真剣な顔をした。


「俺、我慢してたんだけど、昨日も遅くまでバイトだったから眠くてさ」


「それじゃあ、家に帰って寝てください」


「まだ萩花と一緒にいたいんだよね」


「でも……」


「少し寝たら元気になるから、それまで一緒にいてくれない?」


「いいですよ。でも、どこで寝るんですか?」


「んー」


蓮己さんは少し考えてから、私の手を握った。


「こっちにきて」


手を繋いだまま、狭い路地を歩く。


大きな建物が見えてきて、看板にはHotelと書いてあった。


その入り口で止まる。


「私、外泊はできないです」と断った。


「少し仮眠するだけの短時間利用もできるんだよ」


蓮己さんは私の手をぎゅっと握り直す。


「でも……」


知識の乏しい私でも分かる。


ここは“そういうこと”をする場所だって……


怖くなって、手を離そうとした。


「俺、誰にも邪魔されずに萩花と二人でいたい」


蓮己さんは私の手を離さない。


心がザワザワする。


急に碧くんが脳裏をよぎった。


蓮己さんが私を引っ張って歩き出そうとした。