One year left -家族ごっこ-

「なんか、元気ないな」


碧くんが私を覗きこむ。


「……そんなことないよ」


「バイト辞めて、意外と寂しい?」


「ううん」


「どうした?」


黙り込む私の髪を碧くんが撫でる。


「学校で何かあったんだろ」


まるで、あやされているみたい。


「……私のほうがお姉さんなんだから、子供扱いしないでよ」


「悪いな。あんたの髪、真っ直ぐでつい触りたくなる」


近くを通っていく人たちの視線を感じる。


恥ずかしくなって、「触るの、禁止」と碧くんの手を振り払った。


「はいはい」


彼は建物の隅から私の自転車を押してきて、またがる。


私は後ろに乗った。


何も言わなくても碧くんが自転車を漕いでくれるようになった。