晩ご飯を食べ終え、お風呂に入り、ほかのVtuberの動画を観たりコメントをしたりしているとあっという間に午後十時になる。
わたしは慌ててパソコンの画面を切り替えた。
『終わらない楽園へようこそ。礼地エンドです』
エンドさまの生配信が始まった。
「あー。エンドさま、今日もイケメンでイケボー」
わたしは画面に向かって思わず叫ぶ。
『今日はね、前回予告したとおり、トラクエ3をプレイしていくよ。これね、初めてのプレイでして緊張しててて、昨日なんか――』
エンドさまがとても楽しそうにしゃべっている。
エンドさまの声を聴いていると、脳内でチラつく桐生の顔。
桐生のあの声真似、激似だったな……。というか本物としか思えない。
いやいや、これ夢だから。
エンドさまが桐生なわけがないし。
すると、エンドさまがおむすび(ファンネーム)にコメントで催促され、新曲のサビをちょっとだけ歌った。
ああ、やっぱ激うまーーーーー!
エンドさまは、プロの歌手からの転生なんじゃないかっていわれるぐらいに歌唱力が高い。
わたしもそう思っていたけど、今日そうではないことを知ってしまった……。
いや、これ夢、夢だから!
『そっか。今、仕事の帰りなんだね。疲れてる中、配信を観てくれてうれしいよ。ありがとう』
エンドさまはブラック企業勤めのおむすびのコメントに、やさしい言葉をかけた。
『んー。勉強が嫌になった? わかるよ。ぼくも勉強、苦手。だけどね、五分だけやってみよう。そしたらやる気、出るかもよ』
受験生だというおむすびには、アドバイスもする。
『お子さんを寝かしつけてきたんだね。おつかれさま。それじゃあ、この配信でぼくが寝かしつけてあげるからね』
育児中のおむすびには、冗談交じりに父性あふれる言葉を。
さすがエンドさまだ。
カラフルの父といわれるだけあって、全おむすびを癒しにかかっている。
しかもゲーム配信をしながら、というのも器用でエンドさまにしかできない。
この寛容と器用の塊が、桐生はずがない!
そう思っているのにあいつの顔がチラついてエンドさまに集中できなかった。
「桐生め……!」
わたしは枕に桐生の顔を浮かべて思いきりグーで殴った。
次の日のお昼休み。
桐生が先に教室を出ると、わたしは時間差で後をついていく。
廊下を出て誰もいないことを確認した桐生は、振り返ってこちらを見る。
わたしが着いて来ているのか確認したのだろう。
わたしたちは一言もしゃべらず、おまけにかなりの距離を開けて歩いた。
向かう先は屋上。
屋上に誰もいないことを確認した桐生は、口を開く。
「企画は考えてきたか?」
昨夜、エンド様の生配信が終わったタイミングで、桐生からメッセージがきた。
【度胸をつけるためにも、新企画の内容を明日の昼休みまでに考えてくること】
無視しようと思ったけど、小珠が人質に取られているようなもの。
だから適当にやり過ごそうと思ったけど、「適当に考えたろ。Vtuberを甘く見るな」と桐生は怒りそう。
なにせプロ意識の塊、エンドさまの中の人だから……。
さすがにもう夢じゃないのはわかった。嫌だけど。
桐生にはどう思われてもいいけど、エンドさまにはガッカリされたくない。
だから夜遅くまで企画を必死で考えて、良いアイデアが一つ浮かんだ。
「『中学の購買の商品だけで三食、三日間チャレンジ』これどうかな、と思って……」
わたしはそういって桐生を見る。
小珠はまだちゃんとした企画ものをやっていない。
だけど、やるならきちんと面白いものをやろうって考えたんだ。
その結果、『ホラーゲームをクリアするまで眠れない』とか、『カラフル所属のVtuber全員とじゃんけんして勝つまで配信終われない』とか。
色々と考えたんだけど一番、小珠とのギャップがあって、尚且つ他のVtuberに迷惑をかけることにもならないというと、食なんだよね。
「あー……。ぜん」
桐生はそういいかけて、頭を左右に振る。
それから黙り込んだ。
え? なに? なにいいかけたのこいつ?
ぜんぜんっていいかけたよね。
この反応からするに「ぜんぜんダメ」ってこと?
それならハッキリいえばいいじゃん。いつも喧嘩腰のくせに。
そんなことを考えていると、桐生がいう。
「ぜんぜんダメだな。っつーか本気で考えたのかよ」
「オブラートに包もうとして黙り込んだんじゃないの?!」
「最初は言葉を柔らかくしようと思ったけど、別に星谷に遠慮する必要ねーなって思って」
「ちょっとは遠慮してくれてもいいんだけどね」
わたしがいうと、桐生はそれを無視して真面目な顔でいう。
「中学の購買ってことはだな。何が売っているのか動画でバレるってことになる」
「うん、まあそうだけど……あっ、身バレ……?」
「そう。学校の購買はそれぞれ売っているものがちがう。おまけに中学で購買があること自体、わりと珍しい」
「じゃあ中学がバレちゃうか。それはマズいね」
「それに、購買の商品だけでというしばりはともかく、三食を購買にするならもっと細かいルールが必要だな」
「あー。確かに。そこまで考えてなかった」
「たとえば、購買をコンビニに変更して、コンビニ飯で三食過ごすとか、豪華な食事つくってみるとか――」
「あっ。それいいね。メモしておこ」
「そうしたとしても三日間、準備だの撮影だの編集だの考えると、最低でも一週間はかかる」
「そうだね、時間はかかるだろうとは思ってるよ」
「いきなりそんな企画をするんじゃなくて、まずは『レアアイテムが出るまで同じゲームを続ける』とか『流行してる歌をうたってみた』とかで試すのが効率がいいと思うけど」
「うーん。でもさあ、それで度胸つく? それに小珠がやる企画で、『流行の歌を歌ってみた』と『コンビニの新商品で三食・三日間』のどっちが再生数が伸びると思う?」
わたしがそう聞くと、桐生はきっぱりという。
「クオリティ次第だなあ」
「じゃあどっちもクオリティが高いならどっち?」
「……コンビニ」
「でしょ? わたしが飼い主なら見てみたいし」
「でも、初めての企画だろ。時間と労力がかかって効率が悪いと思う」
そういった桐生は真剣だった。
珍しくわたしのことを考えてくれているのか、それとも本当はこの企画が面白そうで小珠にやられると本当に再生数が伸びそうで焦っているのか。
もしかしたら、焦ってるのかもなあ。だとしたらヤル気が出る!
飼い主がもっともっと増えたらうれしいし!
「わたし、この企画ぜったいにやる!」
「なんだ急に……。別にやりたいならやればいいだろ。星谷がやる気になったんなら、まあそれでいいけど」
「クオリティだって追及して、とことん面白いものにしちゃうもんね」
よーし、やる気出てきた!
わたしは慌ててパソコンの画面を切り替えた。
『終わらない楽園へようこそ。礼地エンドです』
エンドさまの生配信が始まった。
「あー。エンドさま、今日もイケメンでイケボー」
わたしは画面に向かって思わず叫ぶ。
『今日はね、前回予告したとおり、トラクエ3をプレイしていくよ。これね、初めてのプレイでして緊張しててて、昨日なんか――』
エンドさまがとても楽しそうにしゃべっている。
エンドさまの声を聴いていると、脳内でチラつく桐生の顔。
桐生のあの声真似、激似だったな……。というか本物としか思えない。
いやいや、これ夢だから。
エンドさまが桐生なわけがないし。
すると、エンドさまがおむすび(ファンネーム)にコメントで催促され、新曲のサビをちょっとだけ歌った。
ああ、やっぱ激うまーーーーー!
エンドさまは、プロの歌手からの転生なんじゃないかっていわれるぐらいに歌唱力が高い。
わたしもそう思っていたけど、今日そうではないことを知ってしまった……。
いや、これ夢、夢だから!
『そっか。今、仕事の帰りなんだね。疲れてる中、配信を観てくれてうれしいよ。ありがとう』
エンドさまはブラック企業勤めのおむすびのコメントに、やさしい言葉をかけた。
『んー。勉強が嫌になった? わかるよ。ぼくも勉強、苦手。だけどね、五分だけやってみよう。そしたらやる気、出るかもよ』
受験生だというおむすびには、アドバイスもする。
『お子さんを寝かしつけてきたんだね。おつかれさま。それじゃあ、この配信でぼくが寝かしつけてあげるからね』
育児中のおむすびには、冗談交じりに父性あふれる言葉を。
さすがエンドさまだ。
カラフルの父といわれるだけあって、全おむすびを癒しにかかっている。
しかもゲーム配信をしながら、というのも器用でエンドさまにしかできない。
この寛容と器用の塊が、桐生はずがない!
そう思っているのにあいつの顔がチラついてエンドさまに集中できなかった。
「桐生め……!」
わたしは枕に桐生の顔を浮かべて思いきりグーで殴った。
次の日のお昼休み。
桐生が先に教室を出ると、わたしは時間差で後をついていく。
廊下を出て誰もいないことを確認した桐生は、振り返ってこちらを見る。
わたしが着いて来ているのか確認したのだろう。
わたしたちは一言もしゃべらず、おまけにかなりの距離を開けて歩いた。
向かう先は屋上。
屋上に誰もいないことを確認した桐生は、口を開く。
「企画は考えてきたか?」
昨夜、エンド様の生配信が終わったタイミングで、桐生からメッセージがきた。
【度胸をつけるためにも、新企画の内容を明日の昼休みまでに考えてくること】
無視しようと思ったけど、小珠が人質に取られているようなもの。
だから適当にやり過ごそうと思ったけど、「適当に考えたろ。Vtuberを甘く見るな」と桐生は怒りそう。
なにせプロ意識の塊、エンドさまの中の人だから……。
さすがにもう夢じゃないのはわかった。嫌だけど。
桐生にはどう思われてもいいけど、エンドさまにはガッカリされたくない。
だから夜遅くまで企画を必死で考えて、良いアイデアが一つ浮かんだ。
「『中学の購買の商品だけで三食、三日間チャレンジ』これどうかな、と思って……」
わたしはそういって桐生を見る。
小珠はまだちゃんとした企画ものをやっていない。
だけど、やるならきちんと面白いものをやろうって考えたんだ。
その結果、『ホラーゲームをクリアするまで眠れない』とか、『カラフル所属のVtuber全員とじゃんけんして勝つまで配信終われない』とか。
色々と考えたんだけど一番、小珠とのギャップがあって、尚且つ他のVtuberに迷惑をかけることにもならないというと、食なんだよね。
「あー……。ぜん」
桐生はそういいかけて、頭を左右に振る。
それから黙り込んだ。
え? なに? なにいいかけたのこいつ?
ぜんぜんっていいかけたよね。
この反応からするに「ぜんぜんダメ」ってこと?
それならハッキリいえばいいじゃん。いつも喧嘩腰のくせに。
そんなことを考えていると、桐生がいう。
「ぜんぜんダメだな。っつーか本気で考えたのかよ」
「オブラートに包もうとして黙り込んだんじゃないの?!」
「最初は言葉を柔らかくしようと思ったけど、別に星谷に遠慮する必要ねーなって思って」
「ちょっとは遠慮してくれてもいいんだけどね」
わたしがいうと、桐生はそれを無視して真面目な顔でいう。
「中学の購買ってことはだな。何が売っているのか動画でバレるってことになる」
「うん、まあそうだけど……あっ、身バレ……?」
「そう。学校の購買はそれぞれ売っているものがちがう。おまけに中学で購買があること自体、わりと珍しい」
「じゃあ中学がバレちゃうか。それはマズいね」
「それに、購買の商品だけでというしばりはともかく、三食を購買にするならもっと細かいルールが必要だな」
「あー。確かに。そこまで考えてなかった」
「たとえば、購買をコンビニに変更して、コンビニ飯で三食過ごすとか、豪華な食事つくってみるとか――」
「あっ。それいいね。メモしておこ」
「そうしたとしても三日間、準備だの撮影だの編集だの考えると、最低でも一週間はかかる」
「そうだね、時間はかかるだろうとは思ってるよ」
「いきなりそんな企画をするんじゃなくて、まずは『レアアイテムが出るまで同じゲームを続ける』とか『流行してる歌をうたってみた』とかで試すのが効率がいいと思うけど」
「うーん。でもさあ、それで度胸つく? それに小珠がやる企画で、『流行の歌を歌ってみた』と『コンビニの新商品で三食・三日間』のどっちが再生数が伸びると思う?」
わたしがそう聞くと、桐生はきっぱりという。
「クオリティ次第だなあ」
「じゃあどっちもクオリティが高いならどっち?」
「……コンビニ」
「でしょ? わたしが飼い主なら見てみたいし」
「でも、初めての企画だろ。時間と労力がかかって効率が悪いと思う」
そういった桐生は真剣だった。
珍しくわたしのことを考えてくれているのか、それとも本当はこの企画が面白そうで小珠にやられると本当に再生数が伸びそうで焦っているのか。
もしかしたら、焦ってるのかもなあ。だとしたらヤル気が出る!
飼い主がもっともっと増えたらうれしいし!
「わたし、この企画ぜったいにやる!」
「なんだ急に……。別にやりたいならやればいいだろ。星谷がやる気になったんなら、まあそれでいいけど」
「クオリティだって追及して、とことん面白いものにしちゃうもんね」
よーし、やる気出てきた!



