ドブスが超イケメン達の逆ハーを作る話

「超イケメン達との逆ハー生活をする気ありませんか?」


 ある日町を歩いていたら、変な奴に話しかけられた美子は思った。


(新手の宗教勧誘にしてはおかしいし、詐欺にしてももう少しマシな嘘をつくよね)


 まぁドン引きしたのである。



 美子は、ハッキリ言って生まれつき不細工で彼氏いない歴年齢で、もうモテについては悟りの領域となり、諦めていて、30歳までどうたらならば魔法使いになれるという説を、自分もそうなると確信しているある意味無敵の人なのである。

 ちなみに自分の名前が全然自分と一致しないので自分の名前すら嫌いなのであった。

「いや待ってください、貴女はその資質があるのです!」



 無視したらスカウトが食いついてくるではないか……




「……あのですね、私お金無いですよ」



 ハッキリ言ってやった!詐欺ならどっかいけと!



 この容姿のせいで、就職すら苦労して、結局バイト生活なんだぞと!



 さらに容姿が仕事に影響するような接客でも無いのに不利になっているんだぞと!



 だから貧乏なんだいい加減にしろと!



「……心配しないで下さい、そういうことではないんです、少しだけ少しだけお話を聞いていただけないですか?もちろんおごりますからあのあたりの喫茶店で……」




 美子は思った、まさか喫茶店から誘拐なんかされないだろうし、おごるってのなら飲食だけしてさようならすればいいやと。

 アホらしい話に付き合うのだからそれくらいはいいよねと。


 喫茶店で飲み食いしたってしれているのだから、貧乏生活のために、もらえるものはもらわないとね!と……



 そして喫茶店に入ると、スカウトらしき言う奴が言う。



「失礼ながら、ご結婚、もしくは彼氏さんなどはいらっしゃいますか?」



 ……本当に失礼な奴だと思った。いるわけねぇだろ!って怒鳴りつけてやりたかったが、ひがみっぽくなるのが嫌なので言ってやる。



「……いないわよ、それで何かいけないの?」




「……いえ助かりました!むしろそういう方を求めていたのです!」



 さっきからこいつは何を言っているのだろうか?


 まぁ喫茶店でごちそうになっているから、それだけは感謝しますけどね!




「……正直言うとご自身の容姿に自信が無いとかありますか?」



 はぁ?何で他人にこんなことをいきなり初対面で言われないといけないの?


 ぶっちゃけ席を立ちたくなったが、まだ食べきれていないので……


 意地汚い自分が嫌になるけど……



「そうよ悪いの?」



「いいえ!素晴らしい!やはり貴女こそ求められていた逸材なのです!」




 ……大体読めたわ!



「つまりドブスを綺麗に改造しますみたいな整形手術の誘いとか?」




「いいえ!全然違います、貴女のして欲しいことは、超イケメン達の渇きを癒して欲しいのです……」




 ……何を言ってるのかしら?荒唐無稽過ぎて、私は夢でも見ているのかしら?


 それとも小説の世界にでも入り込んだのかしら?



 そう思うレベルで、こいつの言ってることが支離滅裂にしか聞こえないのであった……




「意味が分からないわ、私はカウンセラーじゃないのよ!」


 我ながら変な質問に真面目に返しすぎたと思った……



 こういうところで機転が利いたことが言えないからなぁ……

 だから容姿だけじゃなくて全部が駄目駄目なんだなと自己嫌悪まで感じるのであった……




「……カウンセラー程度では癒せない本物の渇きを貴女なら癒せるのです!」




「……意味が分からないんだけど……」




「もしよかったらついてきていただけないでしょうか?少しでも興味があるのでしたら……そうそうお会計はしておきますので、どうしても信用できないのでしたらこのままお帰り下さい、ただしどうかできれば来て下さると助かります」



 そういうなりこのスカウトは席を立ち、会計を済ませて外で待っているようでは無いか……




 私は考えた……


 どうせこの先ろくな人生でもないし、私なんかを騙して風俗に売るなんてボケもいるわけないだろうし、お金が無い様子はさっきの食い意地からバレているだろうし、騙すメリットなんてないよね?


 ってことで、どうせろくでもない人生だから、これが変わった経験にでもなれば、どこかで自慢できる唯一のことになるかも……


 そう思って無謀にもついていくことになった……



 こうして何か高級そうな車に乗ることになった私だが……



 しばらくすると高い高級そうなビルについて、エレベーターに乗って部屋まで案内されたのであった……




 そこには外からマジックミラーみたいなもので見れるようになっていて、中に確かに超イケメンっぽい人が何人もいることが明らかになった!


 というか私はアイドルとかモデルに詳しいわけじゃないけど、明らかにトップアイドルやトップモデルそうな雰囲気の人いなくない?


 どこかで見たことがあるようなないような、もしくはそういう系統のオーラが漂いまくっている人?



 私がこれマジなの?って驚いていると、スカウトが言い出す……



「あの部屋の中に入っていただいてもいいでしょうか?」




「入るわ……」



 正直もうわけがわからないので言いなりになっている気もするが、好奇心が勝ったのもある。




 私が部屋の中に入ると超イケメン達が反応をする……



「おお~さすがスカウトちゃん、俺達の望みが叶いそうな人を連れてきたじゃん」


 などと言い出す……


 一体どういうことかしら?



 ここから超イケメン達の恐ろしい渇きの正体を聞かされることになるとは、私も思わなかったのだが……




 超イケメンの1人が言い出す「早速だけど自己紹介がてら全員でデートしようぜ」

 などと、一部の有名人な人は「流石に俺は顔バレ怖いからパスしておくから、お前らだけで言ってこいよ、ただし今度は俺優先だけどな」などと言って断ったみたいだが



 それ以外の8人の超イケメンと私の9人で街を歩くことになってしまったのであった……




 超イケメンの1人が言う「いい店あるんだ、そこに行こう」


 淡々と強引であり、私はもう意味が分からないのでなすがままについていくことになった……



 ……よく考えるとこんなの本来ならば女が男にまわされることを警戒しろよって怒られそうだが、私は展開についていけなかったのと、自分がドブス過ぎて、こんな超イケメン達がそんなことをするわけがないという、謎の安心感があったので、無駄についていったのである。



 そして高級そうなお店にたどり着いた、当然入ったことなど一度も無いが……



 その時に、大きなテーブルで食事を待っていると、


 いかにも港区系女子って言えばいいのかしら?お高そうな美女たちが私達のほうを見て噂しているのが聞こえてきた。



「あれどういう集まりかしら?」



「超カッコいい人達と明らかに場違いなドブスが1人なんだけど……」



「超お嬢様がイケメン買い占めをしたとか?」



「……それにしては服もダサいじゃない、ありえないでしょ!」



「じゃあどういうこと?」



「あのイケメン達が全員盲目とかなんじゃないの?きゃはははは」


 なんて笑っている、私は嫌な気持ちになったが、超イケメン8人が全員立ち上がって、そいつらの元に向かうでは無いか!


 一体何が起きるのか!?私が驚いていると、超イケメン達の恐ろしい実態が明らかになったのであった……





「やぁ君達、俺達はカッコいいと思うかい?」



「も……もちろんです……」


 なんて港区系女子がうっとりしているのだが、



 私は別に私のためにデートをして欲しいなんて図々しいことは思っていない。


 でもさぁ流石にその口説きをしたいのなら、私を連れまわさずにして欲しいわ。


 もしかして私に見せて嫌がらせをするのが楽しみとかいう歪んだいじめをしているの?


 超イケメン様ともあろうお方が!?



 私が不愉快な気分でいるとそれは誤解で、もっと恐ろしいことなのであった……




「それで君達は自分達がキレイとか思ってる?」



「え~私達まだまだですよ~」



「いやいや本音を言ってよ、キレイとか思ってるでしょ?」



「まぁ……ちょっと?」



「僕らはちょっと綺麗なんてのは興味ないんだよ正直に言ってよ、本当は凄くキレイとか思ってるでしょ?」



「え~わかっちゃいます~」




 これがリア充の会話ってやつ?私には全然ついていけない世界だと思っていたら……




「弁えろドブス!」



 そう恐ろしいドスの利いた声が聞こえてきたのであった……



 あまりなことで私は固まったが港区系女子が怒りだす……



「はぁ?私これでもたくさんのパパ活成功している美女ですから!」


 なんて反論するが、



「黙れブス、お前らなんか世界一美しい俺様からしたらどうでもいいんだよ弁えろボケが!」



 あまりの剣幕に唖然とするが、超イケメン達8人は全員当然のような態度をしている。


 この人達自分が世界一美しいと本気で思っているわけ!?!?!?!?!?



「何言ってるの!あんた達なんてあんなドブスを連れてるじゃない!」


 と港区系女子が文句と言うと……




「その通りお前もあの女も世界一美しい俺様からしたらドブスである点は同じだ、それならばドブスと自覚があって弁える分、あの女のほうが上等で、自覚もねぇ無能のクソカスとは違うんだ分かったら帰れ!」



 何て横暴を連呼している、港区系女子が、「ちょっと店員さんこんなの店に入れていいと思っているの!?」と文句を言うも店長らしき人が現れて、


「あの方々はVIPです、出て行くのなら貴女達ですね」と容赦無く追放されるのであった……




 私は頭が固まった……



 な……なんなの?今まで聞いたことも見たことも無い世界に迷い込んだことだけは分かったのであった……


 超イケメン達は一体何を思っているのか……




 その後私は食事中にきっと頭が回っていなかったのだろう。


 気が付いたら家についていた……



 脳がきっとパンクしていたのね……



 ……失礼をしていなかったらいいのだけど……




 ……少なくても分かったことは、私がまったく知りもしない世界であるということだ!


 そしてあの超イケメン達は世界一自分が美しいと本気で信じている人達だ。


 確かに超イケメンだったけど、世界一まで突き抜けるなんて……



 ……1つだけ不思議なのが、世界一美しいと思っている男同士が、どうしてああも連帯的なのかなと、そこだけ不思議に思うのであった……



 次に呼ばれたら聞いてみようかなと……




 そして翌日スカウトから連絡があった……



「やぁ、彼らはそれなりに楽しめたみたいで、私の見る目が評価されて良かったよ、次も大丈夫だよね?」などと確認があり、


 驚きはしたも、特に私を酷いことをすると言う気はないみたいだし、お金ももらえるようなので、応じることにした。


 それにさっきの疑問、どうして世界一同士が喧嘩をしないのかも聞いてみたいですからね……


 すると3日後に、今度は前に参加しなかった1人の超イケメンと1対1でデートすることが決まったのであった……


 大丈夫かしら?服装に失礼は?とか聞くと、


「いいんだ、そういうことは気にしなくていい、彼らはそういう段階をもう超えている!詳しくは本人に聞くといいよ……」


 と言うだけだ、まったくもって私にはますます分からないと思うのであった!




 3日後、スカウトの人が迎えに来てくれて、車で何か高級そうな店の個室まで案内してくれた……



 そして超イケメンが待っていたのだが、私でも知ってるアイドルの人では無いか……



 スカウトの人は帰る前に言う、「もちろん分かっていると思うけど、他言無用だよ」と。


 別に自慢なんかする気などないし、誰も信じないだろうから別にいいのだけど、まさか、こんな人までいるなんて……


 と私はまたしても驚きしかなかったのであった……



「流石に仕事上スキャンダルはご法度なんでね、バレたくないのさ」



 などとアイドル超イケメンは言う……


 まぁ当然ですわね……




 早速食事を食べながら、私は思わず質問をしてしまう……



「あの、貴方ならば私も知ってるレベルのアイドルの方だから、こんなことをする必要が無いのでは無いでしょうか?」




「……何故そう思うだい?」




「え?だって超モテモテじゃないんですか?」



 すると超イケメンアイドルは笑いだすでは無いか……



 え?おかしなことを言った?




「ははは、この私は当然として、他の会員もそういう段階はもう卒業しているのさ……」




「……意味が分からないのですが!」




「言うまでもなく、この俺は幼い頃からカッコよくて仕方なかった、これは自慢する気など一切なく、単なる事実なんだよ……」




「そうでしょうね……」



 何て言うかここまで前の8人もそうだけど、清々しいまでの容姿への絶対の自信を言われると、嫌味を超えて凄みになるのだなと正直思うのであった……



「だからモテてモテて仕方なくて、可愛い子や美女をとっかえひっかえするなんて段階は、とっくに卒業済みなのさ!」



 ……言ってることは割と酷いのに、まるで悪びれないから、何て言うかこっちもひえ~と思うしかない……



「……でもだからって何でこんなことを?何で私のような可愛くもなんとも無いものと?」




「……そうここからが大事なんだよ!前にデートしたものから君のことを聞いたけど、君とドブス共の違いはね、単純に言うと、自分の身の程を知っているかどうかってことなのさ」




「……そういえば何かそんなこと言われてました」




「言うまでもなくこの俺は世界一の超イケメンである、にも拘らず自称美女達は、この俺と釣り合うと思って寄ってくるか、または俺をアクセサリーのようにしたくて、ようは俺と付き合うことで自分が輝くためのものにするために寄ってくる。無礼者な上に、お前の道具何かになる気は無いって思って当然では無いか?」



 ……私には理解できない価値観と発想故に答えることができない……




「だが今の君は今の反応から見て、俺とデートしたから自分って最高なのよみたいな自惚れをするボケでもなさそうだし、もちろん自分は容姿で釣り合うみたいな戯言を思う馬鹿では無い。それがいいんだよ、前のデートをした奴らの言ってた通りだ……」



「……あの私には全然よく分からないことを仰っているのですが……」



「ああいいんだ、別に分からなくても、これが分かるものは、俺達だけだと思うから……」



「どういうことですか?」



「生まれつき超イケメンに生まれてしまい、美女なんてものに飽きてしまった男同士だけが理解することだからね……」



 なるほど……だからあの8人もこの超イケメンアイドルも、自分が一番カッコいいと思っているのに、他の会員と喧嘩にならないのかな?




「だから、皆さん妙に仲いいんですね……」



「そういうこと、俺達は孤独を共有しているのさ」



「孤独?そんなにモテるのに!?」



「……いやだから俺が言う孤独とは、下らないボケ共にまとわりつかれているのに、それを理解されない孤独さ……」



 はぁ……超イケメンには超イケメンの謎の苦労があるわけですね……



 私には全く無縁の孤独ですが……



「つまりモテて全然嬉しくないってことですか?」




「……モテ自体が嫌なわけではないが、俺達はあまりにもクソな身の程知らずか論外の女共に追い回され過ぎた、もうその不信が回復するレベルを超えてしまったのだよ……」



 ……超モテる方は超モテるかたで、絶対にモテない私とは違う苦しみがあるのだなと、世界の広さを感じるのであった……




「でも、それでも私みたいな相手でいいんですか?だって一度もモテたことが無いレベルの容姿ですよ?」




「彼らも言ってなかったか?世界一美しい俺からしたら、誰であってもブスなんだからそういうのどうでもいいんだよ」



「だから服装も気にしていないってことですか?」



「その通り、俺に相応しい美女を連れ歩きたいなんて言う奴は、自分1人で絶対の美しさを持っていない情けないヘタレなんだよ、この俺ならば、俺が何をしようが俺が美しいことは変わらない!」




 ……世界一自分が美しいと思う人の価値観がここまで突き抜けているとは知らなかった……



「つまり、私のようなブスを連れ歩いても恥ずかしくないってことですか?」



「そうなる!というか連れ歩く相手がブスなら恥ずかしいのなら、俺は誰も連れ歩けないことになる、だって全員ブスなんだから!ただしこれでもアイドルをしているんでね、顔バレの類が怖いから、そういう意味で誰も連れ歩くことはできないが、それは職業上の問題に過ぎない!」


 ……ルッキズムってそれを極めると自分以外ドブスというある種の怖い平等性になるのだなと、私は気づいたのであった……



「俺はね、俺が鏡を見る瞬間が一番美を感じるんだ。当然だろう?だって俺が世界一美しいのだから、だからそれ以外のものに美なんか求めないのは当たり前じゃないか……!」



 あまりにも堂々というので、笑うこともできずに、私はただうなづくしかないのであった……




「それにしても君はいいよ、どいつもこいつも、俺を超イケメンと認めるくせに、自分がドブスと言われると、怒り出すが、君は当然の事として受け入れている、そんな女希少過ぎる!俺達はそういう女に飢えているんだ!」




 ……私はもう生まれてこの方一度もモテたことないから、悟っているだけですけどね……



「それは私は嫌でも悟るしかなかっただけです、全然モテないのだから……」



「ふふ、そんな雑魚共にモテなくたってどうでもいいだろう、君は俺達のような世界一のイケメンからモテるのだから!」



 どこまでも自分に自信があって凄いなと思った……



「それにさらに素晴らしいのは、この超イケメンの俺達に褒められても、なお自惚れない点だ、俺達といれば自分が輝くなんて思わない女、それを俺達は求めていたんだ!」



 ……私が全然駄目ってのは自分自身が一番知ってますからね、輝けるなんて思ってませんから!



「ひねくれるわけじゃないですけど、私は自分が輝いているなんて思ってないので!」




「あはは、それでいいんだよ、世界一美しい存在以外輝いているなんて思うことが勘違いなんだ、その勘違いをしない頭の良さが君の好きな所だよ!」



 ……好きまで言われてしまって、私の顔が紅潮したことは自分でも分かったが……



「まぁ楽しかったよ、多分俺は君を離さないと思うがよろしく頼むよ……!」



 なんて言われてしまった……



 そして会員はみんな同じ価値観だった、世界一自分を超イケメンと思っており、それ以外のものをドブスと思っていて、弁えない女を嫌っており、それを理解されない孤独を共有する仲間だとお互い思っているようだった……


 だからこそ、何故か全員私を賛美して、みんなで私を共有するように、どうやらなったようだ……



 まさかドブスだと思っていた私が、世界一の超イケメン達の逆ハーレムを作ることになるなんて……


 まさに最初にスカウトに言われた通りでしたわ……



 私はこれが現実なのか夢なのか半分分からないまま、今後もきっと過ごしていくと思う。


 ルッキズムの頂点は変人しかいなかった……