君が消えるまでの49日間


次の日。

私はまた河川敷に来ていた。

夕方の空はまだ明るくて、風が少し強い。

「ほんとに来た」

声の方を見ると、直央が笑っていた。

昨日と同じ場所。

河川敷の柵の前。

「来ちゃだめだった?」

「いや」

直央は肩をすくめる。

「暇人だと思っただけ」

「失礼」

私は少しむっとした。

直央はくすっと笑う。

「まあでも、ありがと」

「なんで」

「未練探し付き合ってくれるんだろ?」

私はため息をついた。

「まだ決めてない」

「えー」

直央は少し大げさに言った。

「じゃあ帰る?」

「帰らない」

直央は笑った。

「ほら」

「やっぱ優しい」

「違う」

私は河川敷の土手に座る。

直央も隣に座った。

風が草を揺らす。

しばらく沈黙が流れた。

それから私は聞いた。

「いつ死んだの」

直央は少しだけ黙る。

それから空を見上げた。

「去年」

「川で」

私は川を見る。

流れはゆっくりだった。

「事故?」

「まあ」

直央は笑う。

「そんな感じ」

「覚えてないの?」

「覚えてるよ」

直央は言う。

「でも未練はわかんない」

私は眉をひそめる。

「普通わかるんじゃないの」

「わかんないんだよ」

直央は笑う。

「気づいたら幽霊だったし」

「適当すぎ」

直央は草を触りながら言う。

「でもさ」

「たぶん」

「やり残したことなんだよな」

私は聞く。

「例えば?」

直央は少し考えた。

「彼女作るとか」

「くだらない」

私は思わず言った。

直央は笑う。

「だよな」

それから少し真面目な顔になる。

「でも」

「そういうのじゃない気もする」

風が強く吹いた。

川の水が光る。

私は聞いた。

「家族は?」

直央は少しだけ黙る。

それから言った。

「いるよ」

「でも会えない」

「幽霊だから」

私は何も言えなかった。

直央は急に明るい声で言う。

「まあいいじゃん」

「暇だし」

それから私を見る。

「未練探しゲーム」

「は?」

「俺の未練を見つけたらクリア」

「意味わかんない」

直央は笑った。

「面白そうじゃん」

私はため息をついた。

「ほんと適当」

「いいじゃん」

直央は言う。

「どうせ暇だろ」

私は黙る。

夕焼けが少しずつ赤くなる。

それから私は言った。

「……じゃあ」

直央が見る。

「少しだけ」

「付き合う」

直央は一瞬びっくりした顔をした。

それから笑う。

「やっぱ優しい」

「違う」

私は言う。

「暇だから」

直央は笑った。

「じゃあ決まり」

それから川を見る。

「俺の未練」

小さくつぶやく。

「なんだろうな」

そのとき私はまだ知らなかった。

その答えが——

私自身だってことを。