高校三年の春。
家にいるのが嫌で、私は河川敷に来ていた。
夕焼けが川を赤く染めている。
風が強くて、草がざわざわ揺れていた。
ここは人があまり来ない。
だから好きだった。
学校でも、家でもない。
私が逃げて来られる場所。
土手に座って、ぼんやり川を見ていると——
「なにしてんの?」
後ろから声がした。
びっくりして振り返る。
そこには知らない男が立っていた。
少し長めの黒髪。
ラフなパーカー。
高校生…より少し年上に見える。
私は眉をひそめた。
「……誰」
「いや、こっちのセリフ」
男はそう言って、勝手に隣に座った。
意味がわからない。
私は少し体を離す。
「話しかけないで」
「冷た」
男は笑った。
「思春期?」
「違う」
「じゃあ反抗期?」
「帰って」
私がそう言っても、男は帰らない。
むしろ楽しそうに空を見上げていた。
「ここ、いい場所だよな」
「……」
「人いないし」
「……」
「逃げるにはちょうどいい」
私は思わず顔を上げた。
男は笑っていた。
まるで、全部わかってるみたいに。
少しむかつく。
「あなたこそ、なんでここにいるの」
男は少し考えた。
「なんでだろ」
それから肩をすくめる。
「彼女作ってないからかな」
「バカじゃないの」
思わず言うと、男は笑った。
「まあでも」
男は立ち上がる。
そして言った。
「帰れないんだけどな」
「は?」
男は振り返った。
そして、軽く言った。
「だって俺」
少し笑う。
「幽霊だし」
私はため息をついた。
「……くだらない」
「ほんとだって」
「証拠は?」
そう言うと、男は少し考えた。
それから河川敷の柵の方へ歩く。
そのまま軽く飛び越えた。
普通なら——
着地の音がするはずだった。
でも。
音はしなかった。
私は固まる。
男が笑った。
「ほら」
「幽霊」
私は言葉が出なかった。
男は少し照れくさそうに笑う。
「早坂直央」
「一応、名前」
それから私を見る。
「お前は?」
少し迷ってから答える。
「……神崎澪」
直央は笑った。
「よろしく、澪」
夕焼けの光が川に反射していた。
そして直央は、何でもないみたいに言った。
「俺さ」
「未練あるらしいんだよね」
「だから成仏できてない」
私は思わず聞く。
「未練?」
直央は肩をすくめる。
「さあ」
「わかんない」
「でも暇なんだよ」
それから私を見て笑う。
「手伝ってよ」
私は眉をひそめた。
「なんで私」
直央は少し考える。
それから言った。
「だってお前」
「暇そうだし」
そしてもう一言。
「それに」
少し優しい声で言う。
「放っとけない顔してる」
私は何も言えなかった。
このときの私はまだ知らない。
この出会いが——
私の人生を変えることになるなんて。
家にいるのが嫌で、私は河川敷に来ていた。
夕焼けが川を赤く染めている。
風が強くて、草がざわざわ揺れていた。
ここは人があまり来ない。
だから好きだった。
学校でも、家でもない。
私が逃げて来られる場所。
土手に座って、ぼんやり川を見ていると——
「なにしてんの?」
後ろから声がした。
びっくりして振り返る。
そこには知らない男が立っていた。
少し長めの黒髪。
ラフなパーカー。
高校生…より少し年上に見える。
私は眉をひそめた。
「……誰」
「いや、こっちのセリフ」
男はそう言って、勝手に隣に座った。
意味がわからない。
私は少し体を離す。
「話しかけないで」
「冷た」
男は笑った。
「思春期?」
「違う」
「じゃあ反抗期?」
「帰って」
私がそう言っても、男は帰らない。
むしろ楽しそうに空を見上げていた。
「ここ、いい場所だよな」
「……」
「人いないし」
「……」
「逃げるにはちょうどいい」
私は思わず顔を上げた。
男は笑っていた。
まるで、全部わかってるみたいに。
少しむかつく。
「あなたこそ、なんでここにいるの」
男は少し考えた。
「なんでだろ」
それから肩をすくめる。
「彼女作ってないからかな」
「バカじゃないの」
思わず言うと、男は笑った。
「まあでも」
男は立ち上がる。
そして言った。
「帰れないんだけどな」
「は?」
男は振り返った。
そして、軽く言った。
「だって俺」
少し笑う。
「幽霊だし」
私はため息をついた。
「……くだらない」
「ほんとだって」
「証拠は?」
そう言うと、男は少し考えた。
それから河川敷の柵の方へ歩く。
そのまま軽く飛び越えた。
普通なら——
着地の音がするはずだった。
でも。
音はしなかった。
私は固まる。
男が笑った。
「ほら」
「幽霊」
私は言葉が出なかった。
男は少し照れくさそうに笑う。
「早坂直央」
「一応、名前」
それから私を見る。
「お前は?」
少し迷ってから答える。
「……神崎澪」
直央は笑った。
「よろしく、澪」
夕焼けの光が川に反射していた。
そして直央は、何でもないみたいに言った。
「俺さ」
「未練あるらしいんだよね」
「だから成仏できてない」
私は思わず聞く。
「未練?」
直央は肩をすくめる。
「さあ」
「わかんない」
「でも暇なんだよ」
それから私を見て笑う。
「手伝ってよ」
私は眉をひそめた。
「なんで私」
直央は少し考える。
それから言った。
「だってお前」
「暇そうだし」
そしてもう一言。
「それに」
少し優しい声で言う。
「放っとけない顔してる」
私は何も言えなかった。
このときの私はまだ知らない。
この出会いが——
私の人生を変えることになるなんて。
