地獄での待ち合わせ
学生時代純粋な恋愛をしといた方がいいとよく聞くが、それは本当なのかもしれない。合コンがきっかけでできた初彼氏。私にとってとても嬉しいものだった。付き合えたと分かった時には胸が躍った。相手は私なんか釣り合わないくらいかっこよくて女心も分かっている。初デートの時にも服を褒めてくれたりエスコートもしてくれた。告白の場所は夜の観覧車の屋上。同棲の時も「これからお前の一日の隣にいさせてくれるなんて俺は幸せもんだな」と言ってくれた。大好きだ。彼の後ろじゃなくて横に立てた気がした。付き合ってから半年。同棲し始めたのだが帰り際。度々知らない甘さを纏って帰ってくる。どれもそれぞれ違うもの。問い詰めた方が良いのは分かっている。だがこれを逃すともう私に彼氏はできないかもしれないという不安に駆られて言い出せていない。
「おかえり。今日も遅かったね?何かあったの?」
「ああ出張だよ。もしかして浮気疑ってんの?何それかーわいっ。心配ないぞ〜」「…そっか。」
いつも視線は私にピッタリ向いていない。だがそんな上辺だけの言葉に喜んでしまう自分が少しいるのも事実だ。そんな自分が嫌になる。今日もため息をひとつ吐いてシングルベッドに入る。ネカティブな思考が渦巻いて眠れない。やはり私は遊ばれているのだろうか?いやそんなことはない。そう思いたい。すると突如ドアを開けられ「なに?眠れないの?なら俺が添い寝してやろうか?」と言ってきた。悩みの原因の張本人が来た。
「いらない。1人で寝れば?」
「まあまあ、いいからいいから」と勝手に布団に入られる。押し返そうと力を入れるが差は明確でそのまま抱き込まれる。その少しの毒のような甘さに逆らえずそのまま眠りに落ちた。こんなふうに毎日丸め込まれズルズルと日々を重ねていた。
ある日百貨店の買い物帰り。見てしまったのだ。彼が知らないワンピースを着た美人と腕を組んでいるのを。私は必死に逆方向へ走った。ヒールで足が痛い。だがそんな痛みなど些細なことだ。分かっていた。分かっていたはずだった。だが直接その現場を見たことで微かな希望を無くした。「はぁ、はぁ、」酸欠で息が苦しい。心まで苦しかった。その日はとても彼の顔を見れずそこら辺のホテルに泊まった。
朝一番に起きてラインを見てみる。何もきていなかった。当然だ。心配のラインが欲しかったなんて我ながら情けないし女々しい。あの現場を見てもなお嫌いになりきれないことに呆れを超えて笑いすらある。これ以上ここにいても仕方ないと一旦うちに帰ったが…。 彼氏が他の女といちゃついていた。こんなことが目の前で起こっているのに彼氏がまだ私の家にいてくれたことに安堵した。どうしようもない。
「ああ、お帰り。こいつ最近仲良くなった女さ。美人だろ?」明らかにイチャついていたのにも関わらず一つも焦るそぶりも無い。私のものなのに。一番だって!言ってくれたのに!だが口から言葉は何も出てこない。彼女と彼が何かを話していたが何も覚えていなかった。しばらくして彼女が帰った後。
「あ、俺たち別れよっか。ちょうどあの子と一緒に住む準備ができたんだよ。お前もまたいい人見つかるさ。悪くなかったよ。ありがと。」 「は?」
他にも言いたいことはあったがそれしか出てこない。なんでなんでなんで! 怒りの気持ちはあったがそれ以上に不安に駆られる。嫌だ。嫌だ。行かないで、行かないでっ。まだ来週のデートも行けていないのに。約束したじゃん!
… 「今夜は月が綺麗だね。いつもより早く待ち合わせ場所についててくれて嬉しいな!いつも少し遅刻してくるんだから」
返事はない。そんなもの私には必要ない。
「今日はデートの約束だもんね!すぐ行くから待っててね!」
