星を拾う指先が、温かくなるまで

 積もったばかりの綿雪が、優しいクッションとなって、少女の体を静かに受け止める。 
 衝撃とともに僕の形は、ただの穏やかな微風へと戻っていった。

 地上に降り立った少女が、おそるおそる自分の手を見つめると、あかぎれだらけの指先には、もう冷たい星屑はなく、柔らかな「赤い薔薇の花びら」が一片、命の熱を帯びてしがみついていた。

 姿は見えないけれど、頬を撫でる風が、さっきまで自分を抱きしめていた。

「誰か」の腕のように優しくて。

 少女は初めて、拾うためではなく、誰かと手を繋ぐために、その手をそっと握りしめるのだった。

 少女が地上で最初の一歩を踏み出したとき、 遠くの空で、一隻の幽霊船が静かに帆を上げ、夜の深淵へと消えていく。

 骸骨が最後に残した黒い薔薇が、 少女の掌の中で、朝焼けのような赤色に染まっていくのを見届けて。

 もう、星を拾う必要なんてない。
 少女の指先には、新しい「明日」の体温が宿っているのだから。

 僕はもう、ただの透明な風。

 彼女の頬を撫でることしかできないけれど、その指先がもう凍えていないことを知っている。

「ねえ。 僕にはわかるよ。 君は今、笑っただろう?」

 その温もりが、僕の祈りの答えなんだ。

 おわり