私が好きになった彼には好きな人がいた。

 朝、目覚ましの音が聞こえる。
 眠い目を擦りながら、“停止”と書かれたボタンを押すと、ロック画面が開く。
 そこには、入学式の時に撮った集合写真が写っている。でも写っているのは陸斗君のアップの姿。
 かっこいいな。こんなことして私大丈夫かな。気持ち悪いよね絶対。でもこんなアイドルみたいな顔立ちで、更に性格まで良い陸斗君を背景写真にする以外ないんだよな...。
 この写真の中の彼は、満面の笑みだからどんな辛い時だって私を助けてくれる。まるで私の神様。
 だけど陸斗君だって、この時みたいに楽しい時ばかりじゃないよね。いつかそんな彼を助けられたらなんてね。

 いつしか季節は冬に変わった。
 陸斗と何か進展があると聞かれれば、少しだけ。
 美術の時間で席が近くなってから、話しやすい男子という存在になった。
 教室でのグループ活動や、少し前にあった文化祭や体育祭で私たちの絆は深まり、君さん呼びではなく互いに下の名前で呼び合うようになった。
 だからと言って恋愛感情を私に持ってるかなんて分からない。ただ、クラスメイトから他の男子よりは喋れる友達みたいなものになっただけ。
 私は話すたび、陸斗の気の使い方や、優しい言葉や親切な行動全てに胸を取られてしまう。
 麟夏は文化祭の前日に告って、成功したらしい。しかも俺も、と言われて両思いだったらしい。それまでは一緒に帰っていたのにいつの間にか私は一人で帰るようになっていた。もうすぐのクリスマスも蒼真君も過ごすらしい。
 はあ、羨ましいよ。今まで分からなかったクリぼっちの辛さが少しだけ分かった気がする。いや十分分かった。
 私も勇気出して、クリスマス空いてる?、って聞いちゃおっかな。でも失敗したらやだな...。
「あっ、朝から天国に紛れ込んでる死神発見。」
 後ろからバッと抱きつかれ、麟夏がそう言った。
 周りを見渡せばみんなワイワイとしていた。確かにこんな楽しい空間に一人俯いて歩いているのは私だけか。学校の校舎よりも、この駅から学校までのこの道が一番賑やかな気がするし。
「あっ、私より彼氏が大事な友達が来た。」
「もーその言い方やだーー私は二人とも大事な友達で恋人だからっ。」
 麟夏は口をぷーっと膨らませる。
「で、今日はどうしてそんな顔してんの?」
「クリぼっちだなぁと思って。」
 はぁーと私は大きくため息をつく。
「それじゃあやっぱり陸斗君に予定空いてるか聞くべきじゃない?もし聞けないなら私聞いてあげるし。」
「えっ、ほんとにいいの?」
「うん。いっつも助けてもらってるしね。よし、そうと決まったら早く教室入ろう。」
 うん、と私は大きく頷いて二人一緒に学校に向かって駆け出した。