私が好きになった彼には好きな人がいた。

 一時間目は美術で移動教室だ。
 今日は、美術で席替えをするらしく、朝から美術を選択しているクラスメイトはワイワイとしていた。
 美術を選択しているのは、15人にも満たないくらいの人数だ。そしてその中には、麟夏や蒼真君に陸斗君がいる。今は出席番号順だから、席が遠いけど今回は近くなってほしい。少しぐらい喋りたい。
 神さま、神さま、と心の中で念じながらクジを引く。私はいつもテストだって頑張ってるし、お母さんやお父さんの手伝いもしてるよ。だからお願い。
 私は紙に書かれた番号に座ると、前の席には…陸斗君がいた。幸せだ。机の下で小さくガッツポーズをする。
 ばくばく、と鼓動が大きな音を鳴らす。後ろ姿をそっと見る。
 ツヤがある、真っ直ぐな黒髪。後ろからぎゅっと抱きしめたい。そのまま唇がくっついてしまって…なんて変な妄想をしてるんだろう。
 にやけてしまいそうな顔を抑えて、真顔を頑張って保つ。
 全員がクジを引き終わり、それぞれが新しい席に座った。
「じゃあ席替えで近くの人に挨拶しといて下さい。」
 担当の村山先生がそう言うと、教室がザワザワし始めた。その流れにのって、陸斗君が後ろを振り返った。
「あ、星野さん。始業式の時以来だね。よろしく。」
「うん。よろしく。また何か分からないとこあったら教えてね。」
 体の温度が上がる。きっと私の顔は真っ赤なんだろう。こんなにも顔が赤かったら好きだってバレちゃうよ。
「おっけい。任せて。」
「ありがとう。」
 きちんと声が出てるなんか分からないよ。でも少しでも席が近くなったならこれはチャンスだ。
「おーい、うるさいぞ。今から今日の放課後に荷物を運んでもらう男女2人を選んでもらうから、男女それぞれ別れて決めろー。」
 みんなが立ち上がり、教室の左側に女子、右側に男子が集まりじゃんけんが始まった。