また会う口実で、お試しカップルはじめました。

その日の夜、

今日はありがとーね。楽しかった

とだけLINEが来た。峰橋さんのInstagramの本垢は、250人規模の普通のアカウントで、投稿もしてない。LINEもInstagramも、正直あんなにイケメンならば、自分の写真をアイコンにしたってなんとも思わないのに、風景画。
でも、
ー峰橋 煖ー
その名前が書いてあるのを見て、不思議と胸がざわついている。


淡白なLINEだな。、、LINE苦手なのかな。
知らない峰橋さんの一面が沢山あって、お試しカップルを了承した私はどんだけ軽いのかと思う。
でも、あの時私は、考える前に口に出てしまったのだ。


こちらこそです!私も楽しかったです笑

そう返すと30分くらいして、返信があった。

強引に話進めちゃったけど
もし嫌になったらその時は言ってね。

「……」

なんだろう。

優しいんだけど、少し距離もある感じ。

でもそれが逆に安心した。

嬉しい。


⸻
卒業式当日
峰橋さんとこの前会った時、ノリで約束した。私の卒業式来てくれるって。


袴姿で友達と写真を撮っていると。

「ねえ、あの人イケメンすぎん!!?」

女の子たちの話声で、ひょっとしてと振り向く。

人混みの向こうに居た、黒いジャケットの彼と目が合った。

「……」

何か企んだような笑顔をして近づいてくる。

そして、

ーー卒業おめでとうーー

花束を差し出してきた。

「え、」

「ちょっと小さいけど」

「……」

顔が熱くなる。

「ありがとう…」

受け取ると、彼が少し笑う。

「似合うな、袴」

「……」

照れて顔をそらす。

その様子を、少し離れたところで友達が見ていた。

⸻

「え、なになに。ちょーっとごめんなさいね!!!」

一緒にいた友達が口を挟む。

「ねえ」

「え?」

「この人誰?」

「え?」

「めっちゃくちゃイケメンじゃん」

「いや…」

「モデルみたいなんだけど」

「……」

「付き合ってるの?」

一瞬迷う。彼はなにも言わない。

でも。

なんとなく恥ずかしくて。

「付き合ってない」

「え?」

私は笑ってごまかした。彼の顔を見れない。

⸻

そのあと、機転を効かせた友達はどこかへ行ってしまい、2人きりの流れができた。

「ごめんなさい、私なんて言ったらいいか。」
「ああいいんだ、気にしないで。ちょーっと悲しかったけどな」

そう言って彼は苦しそうな笑顔を見せる。

袴を返して、

「このあとどうする?」

彼が聞く。

「うーん」

「時間ある?」

「あります」

すると彼が少し笑う。

「じゃあさ」

「?」

「京応も見に行く?」

「え?」

「俺の卒業式の場所」

思わず笑う。

「なんで笑」

⸻

着いた、京応。

「ここ」

「ここで卒業式だったんですか」

「そう」

少し歩く。

「俺ね」

彼が言う。

「大学卒業したとき彼女いなかったんだ」

「へえ」

「だから」

少し笑う。

「今やろうかなって」

「え?」

「擬似卒業式」

私は笑う。

「意味わかんない」

⸻

彼がスマホを出す。

「写真撮ろう」

「でも私の卒アル、米田ですよ」

「いいじゃん」

肩をすくめる。

「俺の卒業式だし」

「……」

二人で並ぶ。

パシャ。

周りの人は、私たちのアルバムが違う色で目立つからか、なにやら笑っているよう。でも彼は気にしてない。

「ほら」

自慢げに画面を見せてくる。

「……」

周りとは違う写真。

でも。

なんだかすごく嬉しい。

頬を赤らめて若葉は笑う。それを見て、煖の目は大きく開いた。


⸻

少し歩く。

試しに付き合い始めた彼。まだ好きかどうか完全には分からない。

でも改めて思う。

堂々としてる。

笑顔がまぶしい。

隣を歩いてると、少しだけ背筋が伸びる。
LINEやインスタはあんなに乏しく、お仕事の場では器用に地味に華麗な技を披露し、プライベートではイケメンで素直で笑顔がとても眩しい。
自分を生きてるあなたは余裕と落ち着きを感じさせてくれる。

「ん?どうした?」

「え?」

「さっきから静かだけど?」

「……」

少し迷って言う。

「なんか」

「?」

「かっこいいなって」

彼が止まる。

そして、からかってくる。

「ふーん、今さら?」

彼が歩き出す。

「でもさ」

「?」

「俺の方が思ってるだろうな」

「え?」

「袴姿も、初めて客として俺の前に現れたときも、この前も」

振り返った

「めちゃくちゃ可愛いよ」


顔が赤い峰橋さんは、また新しい一面だった。