「え、ネイルやったことないの!!?」
[意外]。そんな目を向けられた。
私は鈴原若葉(すずはら わかば)
1ヶ月後に早米大学を卒業する。
眉毛、まつ毛、一通りの美容には心がけているが、ネイルはしたことがない。
なんと言っても不器用で、自分じゃそんなこと出来ない上、ネイルだけはサロンに行くのが嫌だからだ。
中学の時、元々手汗が酷い私はクラスの男子や部活の先輩から嫌がらせを受けて、ますますコンプレックスになった。気を許していない人相手に手を差し出すなんて、手汗がどうなったもんか知らない。
でも、人生最後の卒業式、、、、。
卒業証書を持つその手を可愛くしたい。
ネイルサロンに行ってる子達は口を揃えて行って正解だったと言う。ああ、羨ましい。
眠くて半分意識がない今しかないという勢いで、かの有名な予約サイトから条件を照らし合わせ、
いいなと思った。うとうとしながら予約確定ボタンを押す。
⸻
眩しい日の光は新しい季節を教えてくれる。
人生初のネイルサロンにどぎまぎしながら、池袋の街を歩く。
着いたのは、グリーン大通りから少し路地に入った先にある、灰色の建物。
入口には犬の置物が2つと何もなってない小さな花壇。
中に入ってすぐ、視線が集まるその瞬間に何か心臓がむずむずした。
「初めてなんですけど…」
少し緊張しながら席に座ると、
アシスタントらしき男性が道具を並べてくれた。
長めのストレート前髪で、目はほとんど見えない。
学生さんですか?
は、はい。大学4年生で、、、。
それじゃあもうすぐ卒業式ですね。
そうなんです、それで爪、可愛くしたくって。
何気なくぎこちない会話。
あ、僕は担当の峰橋です。よろしくお願いします。
ーーえ、えええ!!!!!
男性スタッフなんて聞いてない。女のかたでも手汗気にするのに、まして男の人なんて。ーー
あ、あの!
、、、はい?
私、手汗すごいかくんです。だから汚いかなって。ご、ごめんなさい。
、、、、怖くて顔を上げるのに随分時間がたった。恐る恐る上げると、少しだけ口角が上がってるのが見えた。その瞬間、優しそうな笑い方で彼は言う。
僕もね、実は緊張してて。
今まで雑用ばっかりで本業につけたばかりなんです。せっかくの卒業式だしもっと経験ある人が良かったかもだけど、精一杯頑張るから。
だから俺も手汗かいたらごめんね笑
ーー全然大丈夫ですよ。とかじゃなくて、俺も手汗かくかもって言う当たり。私がそれを聞いてプレッシャーに感じず、気楽になれる言葉をかけてくれるなんて優しいな。その前髪に少し隠れた目はどんななんだろう?
優しい目なんだろうな。ーー
じゃあ、まずは甘皮整えますね。
そこからの2時間はとても短く感じた。
はじめはドバドバかいていた手汗も、担当の彼が下にタオルを敷いてくれたおかげで安心できたからか、だんだんと止まっていった。
何より、汚いなんて心から思ってなさそうなその姿が有り難かった。
心を許したから、色んな話を自分からしてみた。
なんだか空気が弾み心地よかった。
ー前髪、で目隠れてて、ネイル見えにくく無いですか?
ーすごい見えないように見えて、意外と見えるんだよ。
ーそうなんだ笑、だってこんなに上手ですもんね。
ーそうかな?でも嬉しい。アシスタントの仕事ばっかだったけど、時間ある時にたくさん練習してたから笑
ー今にきっと有名になっちゃいますよ!
ーありがとう笑笑
ーそしたら個店開いてくださいね?
え?
ー行きつけのお店にしちゃう笑
ー、、、考えてもなかったけど、目指そうかな笑
ーーわざわざ個店にしなくても、この店を行きつけにしてくれたら俺が担当できるのに、この子はなんか抜けてて一生懸命でまっすぐだな。なんとなく、万が一これが最後だと思うと悲しい。ーー
施術の途中、彼が言う。
「もし良かったら…」
「?」
「うち、規則で個人の連絡先は教えられないんですけど」
「はい」
「お店の公式インスタならフォローできます。
そこからDMなら…まあ、返信できるかも」
少しだけ照れた声だった。
「分かりました」
私はなんとなく頷いた。
お店を出て、太陽に手をかざしてみる。
私にしてくれたのは、水色のグラデーションにキラキラのラメがかかった爽やかなネイル。
眺めるとなんだか目がとろけそう。
⸻
数日後
正直、少し迷った。でも結局DMを送ってしまった。
あの人、優しくて上手で印象に残ってしまったから。それに、不安でいっぱいだった初めてのネイルを担当してもらえて本当に良かったから。
伝えたい。
この前はありがとうございました。
卒業式ネイル、すごく気に入りました。
しばらくして返信が来る。
この前言ってた、市販のネイル道具。
もしよかったら説明しましょうか?
え?
店だとゆっくり説明できないので。
そして自然に続く。
休日なら時間作れます。
[意外]。そんな目を向けられた。
私は鈴原若葉(すずはら わかば)
1ヶ月後に早米大学を卒業する。
眉毛、まつ毛、一通りの美容には心がけているが、ネイルはしたことがない。
なんと言っても不器用で、自分じゃそんなこと出来ない上、ネイルだけはサロンに行くのが嫌だからだ。
中学の時、元々手汗が酷い私はクラスの男子や部活の先輩から嫌がらせを受けて、ますますコンプレックスになった。気を許していない人相手に手を差し出すなんて、手汗がどうなったもんか知らない。
でも、人生最後の卒業式、、、、。
卒業証書を持つその手を可愛くしたい。
ネイルサロンに行ってる子達は口を揃えて行って正解だったと言う。ああ、羨ましい。
眠くて半分意識がない今しかないという勢いで、かの有名な予約サイトから条件を照らし合わせ、
いいなと思った。うとうとしながら予約確定ボタンを押す。
⸻
眩しい日の光は新しい季節を教えてくれる。
人生初のネイルサロンにどぎまぎしながら、池袋の街を歩く。
着いたのは、グリーン大通りから少し路地に入った先にある、灰色の建物。
入口には犬の置物が2つと何もなってない小さな花壇。
中に入ってすぐ、視線が集まるその瞬間に何か心臓がむずむずした。
「初めてなんですけど…」
少し緊張しながら席に座ると、
アシスタントらしき男性が道具を並べてくれた。
長めのストレート前髪で、目はほとんど見えない。
学生さんですか?
は、はい。大学4年生で、、、。
それじゃあもうすぐ卒業式ですね。
そうなんです、それで爪、可愛くしたくって。
何気なくぎこちない会話。
あ、僕は担当の峰橋です。よろしくお願いします。
ーーえ、えええ!!!!!
男性スタッフなんて聞いてない。女のかたでも手汗気にするのに、まして男の人なんて。ーー
あ、あの!
、、、はい?
私、手汗すごいかくんです。だから汚いかなって。ご、ごめんなさい。
、、、、怖くて顔を上げるのに随分時間がたった。恐る恐る上げると、少しだけ口角が上がってるのが見えた。その瞬間、優しそうな笑い方で彼は言う。
僕もね、実は緊張してて。
今まで雑用ばっかりで本業につけたばかりなんです。せっかくの卒業式だしもっと経験ある人が良かったかもだけど、精一杯頑張るから。
だから俺も手汗かいたらごめんね笑
ーー全然大丈夫ですよ。とかじゃなくて、俺も手汗かくかもって言う当たり。私がそれを聞いてプレッシャーに感じず、気楽になれる言葉をかけてくれるなんて優しいな。その前髪に少し隠れた目はどんななんだろう?
優しい目なんだろうな。ーー
じゃあ、まずは甘皮整えますね。
そこからの2時間はとても短く感じた。
はじめはドバドバかいていた手汗も、担当の彼が下にタオルを敷いてくれたおかげで安心できたからか、だんだんと止まっていった。
何より、汚いなんて心から思ってなさそうなその姿が有り難かった。
心を許したから、色んな話を自分からしてみた。
なんだか空気が弾み心地よかった。
ー前髪、で目隠れてて、ネイル見えにくく無いですか?
ーすごい見えないように見えて、意外と見えるんだよ。
ーそうなんだ笑、だってこんなに上手ですもんね。
ーそうかな?でも嬉しい。アシスタントの仕事ばっかだったけど、時間ある時にたくさん練習してたから笑
ー今にきっと有名になっちゃいますよ!
ーありがとう笑笑
ーそしたら個店開いてくださいね?
え?
ー行きつけのお店にしちゃう笑
ー、、、考えてもなかったけど、目指そうかな笑
ーーわざわざ個店にしなくても、この店を行きつけにしてくれたら俺が担当できるのに、この子はなんか抜けてて一生懸命でまっすぐだな。なんとなく、万が一これが最後だと思うと悲しい。ーー
施術の途中、彼が言う。
「もし良かったら…」
「?」
「うち、規則で個人の連絡先は教えられないんですけど」
「はい」
「お店の公式インスタならフォローできます。
そこからDMなら…まあ、返信できるかも」
少しだけ照れた声だった。
「分かりました」
私はなんとなく頷いた。
お店を出て、太陽に手をかざしてみる。
私にしてくれたのは、水色のグラデーションにキラキラのラメがかかった爽やかなネイル。
眺めるとなんだか目がとろけそう。
⸻
数日後
正直、少し迷った。でも結局DMを送ってしまった。
あの人、優しくて上手で印象に残ってしまったから。それに、不安でいっぱいだった初めてのネイルを担当してもらえて本当に良かったから。
伝えたい。
この前はありがとうございました。
卒業式ネイル、すごく気に入りました。
しばらくして返信が来る。
この前言ってた、市販のネイル道具。
もしよかったら説明しましょうか?
え?
店だとゆっくり説明できないので。
そして自然に続く。
休日なら時間作れます。

