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「よーし今日も寒いから暖かくして帰れよー」
「きりーつれい」
「さよーならー」
はぁ授業終わったぁ
帰る準備をしていると、、、
「あーいら!かえーろーー!」
後ろから声が聞こえた。
振り返ると、友達の 美咲(みさき) ちゃんが手を振っていた。
この子は立花 美咲ちゃん。高校で初めてできた友達でずっと一緒に過ごしてる子。私とは性格が正反対でとっても元気でポニーテールが似合う美人さんなの。
男の子にも女の子にも人気で誰とでも仲良くなれるの。
羨ましいかぎりだ、
「一緒に帰ろー」
「う、うん」
私たちは教室を出て、廊下を歩きながら昇降口へ向かう。
「そういえばさ!」
靴を履き替えながら、美咲ちゃんがニヤッと笑った。
「昨日ジュエリングの動画見た?」
その言葉に、私は思わず顔を上げる。
「み、見た!」
「やっぱり!」
美咲は楽しそうに笑った。
「Aquaくんの歌やばくなかった?」
その名前を聞いた瞬間、胸が少しドキッとする。
「うん……!すごかった……!」
私は少し恥ずかしくなりながら言う。
「かっこよかったよね……」
「でしょ!?声もいいしさ!」
昇降口を出て、私たちは並んで歩き始める。
冬の空気は冷たいけど、夕焼けがきれいだった。
「愛桜ってさ」
美咲がふと聞いてくる。
「ジュエリングの中で誰推しなの?」
私は少しだけ迷ってから、小さく答えた。
「……Aquaくん」
美咲はすぐに笑う。
「やっぱりー!」
「絶対そうだと思った!」
私は少し顔を赤くする。
「だ、だって……」
「歌も声もかっこいいし……」
そのとき。
ふと前を歩く背の高い男子の姿が目に入った。
背が高くて、静かな雰囲気。
「……あ」
私が小さく声を出すと、美咲が気づく。
「ん?どうしたの?」
私は前を歩く男子を見ながら言った。
「あの人……今朝、ノート拾ってくれた人で……」
美咲は少し目を細めて、その背中を見る。
「あー」
「あの人ね」
「如月 凛」
私は少し驚いた。
「知ってるの?」
美咲はうなずく。
「うん」
「5組の人だよ」
そう言いながら、少し笑った。
「優しいよね、あの人」
「うん」
私はもう一度、その背中を見た。
でも凛は振り向くことなく、校門の方へ歩いていった。
その背中を見送っていると、美咲がふっと笑った。
「背高いよね、如月くん」
「たしか180くらいあるらしいよ」
「え、そうなの?」
私は少し驚いてもう一度その背中を見る。
すらっとしていて、確かにすごく背が高い。
「でもあの人さ」
美咲が続ける。
「優しいんだよね」
「クラスでも静かだけど、困ってる人いたら普通に助けるタイプ」
「……そうなんだ」
私は小さくうなずいた。
朝、廊下でノートを拾ってくれたことを思い出す。
「気をつけて」
そう言ってくれた優しい声。
(ほんとに優しい人なんだな……)
しばらくその背中を見ていると、美咲が私の顔をのぞきこんだ。
「なに?見とれてた?」
「ち、違うよ!」
私は慌てて首を振る。
美咲はくすっと笑った。
「如月くん、かっこいいよね」
「背高いし」
「……うん」
私は小さくうなずく。
さっきの朝のことを思い出していた。
ノートを拾ってくれて、
「気をつけてね」
って言ってくれたこと。
「優しい人だよね」
美咲がそう言う。
「うん……」
私が答えると、美咲は急ににやっとした。
「でもさ」
「愛桜はAquaくん推しだもんね」
「っ……!」
私は一瞬で顔が熱くなる。
「そ、それとこれとは違うよ……!」
美咲は楽しそうに笑った
「じゃあ私はこっち!」
美咲が手を振る。
「また明日ねー!」
「うん、また明日」
私は手を振り返して、そのまま家へ向かった。
家に帰って、部屋に入るとベッドに座る。
そしてスマホを取り出した。
自然と開いたのは💎 ジュエリングのチャンネル。
「あ……」
新しい動画が投稿されていた。
タイトルの下に表示されている名前。
💙 Aqua
私はすぐにイヤホンをつけて、動画を再生した。
少しの音楽のあと、聞こえてきたのは――
『どうも、Aquaです』
低くて落ち着いた声。
その声を聞いた瞬間、思わずつぶやく。
「……かっこいい」
動画の中のAquaくんは、いつものように少し笑っていた。
『今日は歌ってみた動画です』
その声を聞きながら、私はベッドに寝転がる。
やっぱり、何回聞いても思う。
「声、ほんと好き……」
そして、曲が始まった。
優しくて、少し低い歌声。
イヤホンから流れるその声に、胸がぎゅっとなる。
「やっぱりAquaくんすごい……」
動画を見ながら、私は小さく笑った。
そのとき、ふと思い出す。
今日の朝。
廊下でノートを拾ってくれた人。
背が高くて、優しそうで、静かな人。
如月 凛くん。
「……優しい人だったな」
私はそうつぶやきながら、もう一度動画に目を向けた。
私はベッドに寝転びながら、動画を見続けた。
歌が終わると、コメントを読む時間になる。
『今日も来てくれてありがとな』
『ちゃんと寝ろよ?』
その言い方が優しくて、思わず笑ってしまう。
「……ほんと好き」
小さくつぶやいた。
動画が終わっても、私はしばらく画面を見ていた。
そしてスマホを胸に抱きしめる。
「ライブ……行ってみたいな」
私はそうつぶやきながら、天井を見上げた。
