愛のある方へ

君と僕が出会ったのが、もし今だったら。
あるいは、あと少しだけ遅くて、お互いがもう少し大人になってからだったら。
僕たちの結末は、少し違っていたのだろうかと考えることがある。

あの頃の僕たちは、ちゃんと好きだった。
それは間違いじゃなかったと思う。
一緒にいたいと思っていたし、離れたくないとも思っていた。
相手のことを大切にしたい気持ちも、本当だった。
でも、好きという気持ちだけで越えていけることには限りがあるのだと、あの恋が教えてくれた。

世の中には、愛しているだけではどうにもならないことがある。
気持ちがあれば何でも乗り越えられると信じていた頃には、そんなこと思いもしなかった。
けれど実際、現実の前では気持ちなんて簡単に揺れてしまう。
環境や立場、どうしようもないタイミングに押されて、愛しているのにうまくいかないことがたくさんある。
あのとき失ったのは恋だけじゃなくて、好きでいるだけでは守れないものがあるという、少し残酷なものだった。

僕はずっと、あれはタイミングが悪かったのだと思おうとしてきた。
出会う時期が違えばよかったのだと。
あと少しだけ余裕があれば、あと少しだけ大人だったらと。
そう思えば、自分を責めすぎずに済んだからだと思う。

でも本当は、タイミングだけのせいじゃなかったのかもしれない。
僕に、君を最後まで守り抜く勇気が足りなかった。
失うことや傷つくことを怖がって、本当に大事なものを抱きしめる強さがなかった。
君の隣に立ち続ける覚悟より、壊れてしまう未来から目をそらすほうを選んでしまった。
あの恋が終わった理由をきれいな言葉で包もうとしても、最後にはそこにたどり着いてしまう。

それでも、君を好きだった気持ちまで嘘になるわけじゃない。
未熟だったかもしれないけど、本気だったことも嘘じゃない。
守れなかったことと、愛していたことも、きっと矛盾しない。
だからこそ、思い出すたびに少し苦しい。
もし別の世界線があるなら、そこではちゃんと君を幸せにできている僕がいてほしいと思う。
今より少しだけ強くて、今よりちゃんと君を選べる僕がいてほしいと思う。

あのとき叶わなかった未来が、どこかでは続いているような気がして、夢の中で、幸せそうに笑う君と僕を探してしまう夜がある。
たぶんそれは、まだ忘れられないということではなくて、あの恋を失った僕が、今でもあの恋に間に合いたがっているということなのだと思うんだよね。