ただいま、チームで取り合い中。


「やっと会えた…!!めっちゃ寂しかったんだぜ!?」

心底嬉しそうな表情で、俺のことを見つめてくるが…俺には全く見覚えのない顔。

紅色に似た髪色に、炎を閉じ込めたようなオレンジ色の瞳。元気で活発な、ヤンチャだと言うことが一目でわかる見た目をしていた。
実際、すげぇヤンチャだ。喋り方からそう感じる。


「え、と…誰?」


戸惑いながら聞くと、コイツはふと寂しそうな表情になる。まだ会ったばかりなのに、そんな表情もするのかと思ってしまう。

でもそれはほんの少しで、1回瞬きすればまた太陽みたいな明るい笑顔に戻っていた。


「大丈夫、真!オレらが記憶戻してあげるからな!!」

「…は?」

「んでまた飯食いに行こうぜ!」


ポンっ、と親しげに肩に置かれた彼の手。その素振りに、振り払うことも忘れて動揺する。
いやいや…俺ら初めましてだよな?普通「初めまして!」とか挨拶するところじゃねぇの…?

色々衝撃的なことが続くが、1番気になったのが…コイツの言動だった。


「あ、のさぁ…」

「ん!?どうした!」


う、なんだよその希望に満ちた眼は…!
さっきコイツ…いや、ヤンチャ男が言っていた「記憶」のことを問い詰めたいが…なんか聞づらい。

てか、人違いじゃね?“シン”なんて名前、うちの学校にはいくらでもいるし…見た目が偶然似てる人だって居るかもしれない。


「ひ…人違いじゃ、」

「はー?オレが真を見間違えるわけねーだろ!」


自信満々に言うけど、俺はお前のこと知らないからな…!?


「おい皐月!勝手に突っ走るなってあれほど……」


本気でどうしようかと思った時、誰かの声がした。
ヤンチャ男が俺の肩から手を退けて振り返ると、待ちわびていたかのように手を振る。


「慧さんやっと来た!おせーよ!」

「お前が速すぎるんだ」


かけ足でやってきた、縁がデカイ眼鏡をかけた真面目そうな男の人。
…てか、俺この人のこと知ってる。

高校1年生、(たかむら) 慧斗(けいと)先輩。去年…つまり彼が中学3年生の時、中等部の生徒会長を務めていた人。

この人が生徒会長を務めてから、学校の治安が格段に良くなったって噂も聞く。そのくらい優秀な人だったということだ。


「はぁ…ごめんな、コイツが意味わかんないことばかり」


ため息を吐きながら、俺に謝ってくる慧斗先輩。
慧斗先輩は何も悪くないのに。


「…大丈夫っす」

「てか、高等部の貴方がなんでここに?」


俺がそう言うと、彼は驚いたように目を見開いた。


「し、真…俺のこと知ってるのか?」

「?はい…1年前、生徒会長やってた慧斗先輩」


逆に知らない人はいないと思う。周りからの評価も高いって聞いたことあるしな。

んま、顔を合わせたり話したりするのは初めてだけど。


「慧さんだけ、真に認知されてる…!?」

「ずりーんだけど!慧さん代わって!」

「いや、何を代わればいいんだ…」


ヤンチャ男の反応にツッコミを入れながらも、慧斗先輩は俺の方を見て口を動かす。


「…嬉しいものだな、知っててくれてたなんて」

「?…今、なんて言いました?」


声が小さくて聞こえなかった…。

だが慧斗先輩は「なんでもない」と言って、話をはぐらかした。そう言われて気にならない奴はいないと思うけど、先輩だし初めて会ったから無闇に問い詰めることも出来ない。