「じゃあ、気をつけてね」
「ん、いってきます」
母さんが微笑んでいるのを一目見て、俺は玄関の扉を押す。7月下旬。もう夏に入り、強い日差しが俺を照らし出すように迎え入れる。熱気がすごい。
暑さに耐えながら、いつもの通学路を歩く。
てか、今日の母さん今までにないくらい上機嫌だったな。宝くじでも当たったか?
いや、それならもっと大はしゃぎして近所迷惑だと隣の家に怒られるに違いない。
…あ、じゃあ卵のセールとか!
うちの母さんは卵料理大好きでよく作ってくれたし、ほどよく嬉しいだろう。絶対そうじゃん。
俺も卵好きだし、それは嬉しい。今日の晩メシなんだろな…今からでも楽しみになってきた。
頭の中で勝手に解釈をして納得していると、毎日友達と待ち合わせをしている公園が見えてきた。
そこに一足先に着いていたであろう、人影も。俺にいち早く気づいて、微笑んで手を振ってくていた。
俺も薄ら笑みを浮かべて手を振り返す。
「おはよ、ザク」
「ん、はよ…霧」
霧こと、霧ヶ崎 奏は濃いめの紺色の髪と、髪色に似た宝石みたいな瞳が目立つ男子だ。
優しくて穏やかで、だけど面白い…俺の小学校からの知り合い。今はクラスメイトだ。
「ザク、さっきから百面相してたよ?」
「え、嘘。そんなことないだろ」
「いやいやホント。遠目からでも分かるくらい」
くすっ、とおかしそうに笑う霧を見て少し恥ずかしくなる。
俺、そんな表情に出やすいか…?逆に感情が読み取りにくいなんて言われたこともあるくらいなのに。
やっぱり、俺の“1番”の友達だからだろうな。
