昨日。
「…なぁ母さん」
夜、晩メシが終わったあと…母さんに話を切り出した。
本当は水曜日に聞きたかったけど、母さんの仕事が長く続く日が重なって…全然聞けなかった。
「んー?どうした?」
「…俺って、記憶ないの?」
そう聞くと…母さんは驚いたような、悲しいような顔をした。
「誰から聞いたの?」
「えっと…皐月と慧斗さん。あと霧かな」
俺がそう言うと、母さんは「そう」と視線を少し俺から外した。
でも意を決したように、向き直った。
「…うん、一部の記憶が抜けてるの」
「そっか」
そこまでは、大して驚かなかった。もう、3人から聞いていたし納得したから。…記憶は戻らねぇけど。
「…それでさ、チームを決めるバトル?をやることになったんだよ」
「へ?」
きょとんとした表情で、母さんは目を見開く。
そりゃあそうか。多分元のチームメイトを母さんは知ってるし、今更何言ってるのって感じだと思う。
「え…だ、誰と誰がバトルするの!?てかバトルってなに!?」
「ちょ、母さん落ち着いて……」
正気を取り戻したみたいに動き出した母さんは、俺にすごい剣幕で迫ってきた。それを慌てて手で停止させる。
「えと、バトルするのは皐月と慧斗さんチームVS霧チーム」
「バトル内容は…なんか、どっちが俺を楽しませれるか〜みたいな?」
俺が言い終わると、母さんはすぐに言葉をかけてきた。
「ち、チームメイトは…」
「まって母さん、言わないで!!」
きっと…「チームメイトは誰か」を教えてくれようとしたんだろうけど、慌てて俺の言葉で遮る。
「そりゃあ、元のチームに戻った方がいいかもしれない。
でもさ…俺にとって、もう3人とも大事な人だし。そのバトルでちゃんと見極めたいんだ」
…そう。
最初はバトルに反対していたけど、少しずつ状況を把握して飲み込んでいったら…バトルはしたいなって思った。
そのバトルは“前のチームを証明する”もの。だけど俺は“改めて過ごしやすいチームを決める”という感じで捉えてる。
もしかしたら、昔組んでたチームとは違うところと組むかもしれない。
それでも…自分が一番楽しいところで過ごしたい。
「そっ、か。そうよね」
母さんは納得したように、何度も何度も頷いてくれた。
「…分かった。もうお母さんからは何も口出ししない」
その言葉にホッとしたのもつかの間、母さんは続けてこう言ってきた。
「でも、ちゃんとどちらかを選びなさい」
芯の通ったその一言が、俺の心にグサリと突き刺さったまま抜けなかった。
