「なぁ慧さん!ここなんで違うのー?」
「あぁ、そこは冠詞をつけなきゃいけないんだ」
「えー?なくていいじゃん、別に!!」
「そういう決まりなんだ」
「ちぇー」と、拗ねたように言いながらクルクルペン回しをする皐月。そのペンが彼の手からすっぽ抜けて俺の顔に激突する。
「…おい、これ何回目だよ」
「えーと…3回目!!」
「それにしては反省の意思が見えないんだが?」
理不尽な英語の規則に拗ね、皐月のペンが俺に飛んでくる…これがテンプレとなってしまった。
しかも反省の色を全く見せない。
「真、どうだ?」
「あぁ…俺はだいぶ勉強になりました」
「そうか。明日は満点取れそうか?」
「え。いやそれはちょっと……」
慧斗さんの教え方はめちゃくちゃ上手くて、勉強になったけど…元々苦手だから満点は夢のまた夢。
せめて赤点回避くらいだろう。
「はー無理!もう疲れた!」
「皐月。お前はほぼ勉強してないだろ…」
「え!めっちゃしたぜ!?ほら!」
俺らに自信満々にノートを見せてくる。
そこには、小学生が一生懸命アルファベットの練習をしたような痕跡が残っていた。
「…何してるんだ、お前は」
「だってアルファベット大事じゃ〜ん?」
慧斗さんが大きなため息を吐いた。
皐月…また印象が変わったわ。
いつもは騒がしい元気すぎるヤツだけど、勉強の時はただの悪ガキ……
「真!そんな目で見るなって〜!!」
いつの間にか皐月を苦い目で見ていたらしく、皐月が笑いながらツッコんできた。いや、勉強しないお前がいけないんだろ……
「…今何時っすか?」
「ん?今は…18時だな」
「じゃあそろそろ帰ります。今日はありがとうございました」
「真が帰るなら俺も…!!」
「サヨナラー」
俺は皐月と2人きりで帰るのは嫌な予感しかしなかったので、逃げるようにしてその場を立ち去った。
___________はずだった。
「…え、なんで俺連れ戻されたんですか」
「少し話したいことがあってな」
皐月がすぐに出てくると思ったので、俺は扉の裏に隠れてやり過ごすつもりだった。
皐月は案の定通り過ぎてってくれたから、俺も帰ろうとしたら…なんか慧斗さんに見つかった。
俺は強制的に座らされる。
「ゆっくり話すこともなかったから…あと数分、いいか?」
「まぁ、いいですけど…」
俺がそう言うと、慧斗さんはホッとしたような表情をした。
