ただいま、チームで取り合い中。




「…そういえば、明日小テストだって。ザク」

「え、まじ?なんの教科?」

「英語。ザクの一番苦手なねー」


霧の言葉に、言葉を失う。
英語…!?待ってそんな話聞いてねーんだけど!?


「明日の何時間目!?」

「えーと確か、1時間目じゃない?」


お、終わった…!昼休みの後の5時間目とかならまだよかったけど、1時間目となると勉強する時間がねぇ。つまりテスト0点が本格的に目の前に……


「…じゃあ、一緒に勉強するか?」

「え、いいんすか…!?」

「あぁ…首席はキープしているからな。力になれると思う」


その言葉と慧斗さんの誇らしい姿は、まさに神様にしか見えない。餌を見せられた犬のように、俺は食いついてしまった。


「ぜひお願いします!!!」

「っ慧斗先輩、俺が言おうと思ってたのを…!」

「ナイス、慧さん!!」


霧は悔しがり、皐月はすげー喜んでいる。
…あ、確かに。今は俺の好感度を稼いだ方がチームに入ってもらいやすくなる〜的な感じ?

いやこれこそ自意識過剰な妄想か……
でもこんだけ取り合い(?)してくれてるってことは、大切にされてるって思ってもいいよな。

まぁ慧斗さんに着いていけば得だし、行くけど。


「慧斗先輩、俺も教えてもらいたいって言ったら……」

「…すまんな、俺は心が狭い男なんだ」


「まぁ、俺でもそうしてました」と、苦笑いを浮かべる霧。どーせなら霧ともやりたかったけど…教えてもらう身だし、そういうことは言ってられない。


「え、慧さん!オレはいいよな!?」

「…2年生が3年生の内容をやっても、分からないだろ?」


皐月が驚いたように目を見開く。俺もそう。
まさかチームメイトに遠回しで『来るな』と言われて、流石の皐月でも少し嫌な気持ちになったのかもしれない。

慧斗さんを見ると、やってしまったと言わんばかりの表情をした。

…でも


「オレさ…しばらく会えなかった真と居たいのもあるけど、久しぶりに“チーム”で集まりたいんだよ。

 めーっちゃ駄々こねるけどさ?わかんない内容でもやりたい!今後のためだし!」


「まぁ、集まるってもあーくんはいねぇけど」と、付け足すように呟く皐月。きっと“あーくん”という人がもう1人のチームメイトなんだろう。

…てか、皐月の元気さと情熱って騒がしいだけじゃないんだな。自分の意見をはっきり言えるのは羨ましいことだと思った。


「そう、だな。ごめん」

「勝手に押し切ってごめんな、慧さん」

「いや…皐月はそういう男だ」


皐月に微笑みかけると、皐月も嬉しそうに笑顔になった。
そして慧さんは、霧の方へと近づいた。


「…奏。さっきは悪かった」

「いえ、大丈夫です。
 …あ、別に気使って誘わなくていいですよ?
 さっきのは慧斗先輩が一枚上手だったので」

「え!?食わせ者来ない!?よっしゃ…!!」


霧が行かない雰囲気を見せると、皐月はこれでもかと嬉しそうな表情になった。なので俺が一発、軽く頭に拳を落とした…あ、これは暴力じゃないと思う。


「いてっ…真、殴るなよ!!」

「殴ってない」

「殴ったじゃんかー!!」


俺にずいっと迫ってくる皐月。まぁ慣れたから、今は小型犬が顔のすぐ近くにいるのと一緒だけど。


「まぁ、こっちはクラス一緒なんで」

「くぅ…っ。それ反則だろほんと!!」

「文句があるなら学校側にどうぞー」


余裕たっぷりな霧は、皐月を少し煽ったあと俺の方を見た。


「じゃ、また明日。ザク」

「あぁ…またな霧」


手を振ってくれた霧を見送ってから、俺らは慧斗さんの家へと向かった。