空白の卒業アルバム

翌日、雨は降っていなかった。
放課後の廊下を歩いていると、真帆に声をかけられる。

「結月、昨日どこいたの?」

「図書室」

「また本?」

「また本」

「青春の匂いがしないなあ」

「本の匂いはしたよ」

「違う、そうじゃない」

真帆は呆れたように言ってから、なにかを思い出したように目を細めた。

「そういえばさ。私、卒アル委員でさ、写真集めることになったんだけど」

「え、もう?」

「先輩たちのスナップ足りないらしくて。部活とか委員会とか、日常の写真も欲しいんだって」

「へえ」

「結月、本好きで図書室よく行くじゃん。三年の読書キャラな先輩とかいたら、さりげなく情報ちょうだい」

「読書キャラな先輩って、くくり雑すぎない?」

「雰囲気で!」

真帆は勢いよく言ったあと、にやっとした。

「なんか、いそうじゃん。雨の日の図書室にひっそりいる美形の先輩とか」

結月の肩がびくっと揺れた。

「……なんで限定的なの」

「なんとなく。今の顔、怪しい」

「怪しくない」

「ほんとに?」

「ほんとに」

必死に平静を装うと、真帆はますます面白そうな顔になる。

「ふーん。まあいいや。いたら教えて。卒アル委員は常に素材不足だから」

「素材って言い方」

「現場はドライなの」

それだけ言って、真帆は別の友達に呼ばれて走っていった。

結月は取り残されて、妙にざわつく胸を押さえながら、しばらく立ち尽くしていた。