空白の卒業アルバム

卒業式が終わったあとも、雨はしばらく降り続いていた。

校舎の窓を伝う雫を見ながら、結月はぼんやりと廊下を歩く。
真帆が隣にいた。
何か言いたそうにして、でも結局、何も言わない。

結月は胸ポケットの栞を指でつまむ。

古い紙の栞。
少しだけ毛羽立っていて、触るとやわらかい。

「……これ、誰にもらったんだっけ」

何気なく聞くと、真帆が足を止めた。

結月は不思議に思って振り返る。

真帆は、少しだけ困ったみたいに笑った。

「たぶん」

小さく息を吸ってから、言う。

「すごく大事な人」

結月は首をかしげた。
その答えでは何も思い出せないのに、胸の奥だけがきゅっと痛んだ。

雨の匂いがする。
古い紙みたいな匂いも、少しだけした気がした。

けれど、振り返っても、そこには誰もいなかった。