空白の卒業アルバム

その夜、結月は自分の机の上に、栞と付箋を並べた。

『雨の日に、また図書室で』

何度見ても、同じ字だ。
やわらかくて、少し古風で、でも迷いのない字。

結月は目を閉じる。
すると、白い空白の枠と、先輩の横顔が重なった。

そんなはずない、と思う。
でも、そんなはずない、で押し返せるほど、胸はもう鈍くなかった。

三年E組。
天体観測部。
四十年前の栞。

もし、先輩が最初から今の三年生じゃなかったら。

その考えに触れた瞬間、結月は慌てて首を振った。
まだ、だめだ。
まだそこまで行ってしまったら、戻れなくなる。

結月は付箋をそっと教科書に挟み直した。

名前がどこにもなくても。
写真がなくても。
結月だけは、あの人が「いた」ことを知っている。

それだけを抱えて、眠るしかなかった。