真帆が、ページの上で固まったまま動かない。
結月も、息をするのを忘れていた。
白い。
ただ、白い。
写真があるはずの場所だけが、切り取られたみたいに空いている。
名前のあるはずの場所も、何も書かれていない。
印刷ミス、というには、あまりにもきれいだった。
最初からそこだけを「ないこと」にするつもりで作ったみたいに。
「……これ、やばくない」
真帆の声が、ひどく小さい。
結月は返事ができなかった。
白い枠から目が離せない。
そこに、何かがいた気がする。
見えていないのに、見てしまった気がする。
真帆が、恐る恐るページの端をめくる。
前のページ。
クラス写真。
三年E組の集合写真。
古い印刷のざらついた紙の上で、制服姿の生徒たちがぎこちなく笑っている。
今より少し形の古いブレザー。
女子のリボンも、男子のネクタイも、色が褪せて見えた。
結月の心臓が、どくん、と鳴る。
「これ……誰かいたんだよね」
結月がやっと声に出すと、真帆はゆっくり頷いて、ページの下を指差した。
『三年E組 四十三名』
アルバムの端っこに、小さくそう書いてある。
真帆が指で人数を数え始めた。
一人。
二人。
三人。
結月も一緒に数える。
息が苦しい。
指先が冷たい。
四十。
四十一。
四十二。
そこで終わる。
「……一人足りない」
真帆が、掠れた声で言った。
このアルバムを作った時点では、たしかに四十三人いた。
でも、完成したページからは、一人だけが抜けている。
「……あとから消したみたい」
結月が言うと、真帆は唇を引き結んだ。
「うん。そう見える」
結月は、アルバムを持つ手に力が入った。
重い。
古い紙の束なのに、ひどく重かった。
一人足りない。
その言葉が、胸の中で何度も反響する。
足りないのに、四十三名と書いてある。
載っているのに、消えている。
いたのに、いない。
「結月」
真帆が、いつもの調子をなくした声で言う。
「……まだ、決めつけるのは早いよ」
結月は白い枠を見たまま、小さく頷いた。
そうだ。
まだわからない。
この空白が、朝倉先輩だなんて。
そんなふうに言い切ってしまうのは、怖かった。
怖いくせに、胸の奥だけが勝手に近づいていく。
「……調べよう」
声にすると、喉が少しだけ震えた。
真帆が頷く。
「うん」
結月も、息をするのを忘れていた。
白い。
ただ、白い。
写真があるはずの場所だけが、切り取られたみたいに空いている。
名前のあるはずの場所も、何も書かれていない。
印刷ミス、というには、あまりにもきれいだった。
最初からそこだけを「ないこと」にするつもりで作ったみたいに。
「……これ、やばくない」
真帆の声が、ひどく小さい。
結月は返事ができなかった。
白い枠から目が離せない。
そこに、何かがいた気がする。
見えていないのに、見てしまった気がする。
真帆が、恐る恐るページの端をめくる。
前のページ。
クラス写真。
三年E組の集合写真。
古い印刷のざらついた紙の上で、制服姿の生徒たちがぎこちなく笑っている。
今より少し形の古いブレザー。
女子のリボンも、男子のネクタイも、色が褪せて見えた。
結月の心臓が、どくん、と鳴る。
「これ……誰かいたんだよね」
結月がやっと声に出すと、真帆はゆっくり頷いて、ページの下を指差した。
『三年E組 四十三名』
アルバムの端っこに、小さくそう書いてある。
真帆が指で人数を数え始めた。
一人。
二人。
三人。
結月も一緒に数える。
息が苦しい。
指先が冷たい。
四十。
四十一。
四十二。
そこで終わる。
「……一人足りない」
真帆が、掠れた声で言った。
このアルバムを作った時点では、たしかに四十三人いた。
でも、完成したページからは、一人だけが抜けている。
「……あとから消したみたい」
結月が言うと、真帆は唇を引き結んだ。
「うん。そう見える」
結月は、アルバムを持つ手に力が入った。
重い。
古い紙の束なのに、ひどく重かった。
一人足りない。
その言葉が、胸の中で何度も反響する。
足りないのに、四十三名と書いてある。
載っているのに、消えている。
いたのに、いない。
「結月」
真帆が、いつもの調子をなくした声で言う。
「……まだ、決めつけるのは早いよ」
結月は白い枠を見たまま、小さく頷いた。
そうだ。
まだわからない。
この空白が、朝倉先輩だなんて。
そんなふうに言い切ってしまうのは、怖かった。
怖いくせに、胸の奥だけが勝手に近づいていく。
「……調べよう」
声にすると、喉が少しだけ震えた。
真帆が頷く。
「うん」



