空白の卒業アルバム

その夜、結月は自分の部屋で、机の上に付箋と栞を並べた。
蛍光灯の下で見ると、栞の紙は思った以上に古びている。
端が少しだけ毛羽立っていて、触ると柔らかい。

先輩の制服の匂いが、ふと蘇った。
古い紙の匂い。
雨の日の図書室の匂い。

結月は、スマホで朝倉陽介と検索した。
同姓同名はたくさん出る。でも、近所の中学生の情報なんて、出るはずがない。
学校名を入れても、出ない。

結月は次に、学校のホームページを開いた。
年間行事。部活紹介。学年だより。

――三年生は、A組、B組、C組。

そこに、E組はない。

結月はスマホを握りしめた。
指先が冷たい。

「……じゃあ、先輩は……」

息が詰まる。
考えたくないのに、頭が勝手に最悪の形を探してしまう。

もしかして、結月は本当にひとりで。
雨の日の図書室で見たのも、全部、妄想で。
誰もいない廊下で、勝手に先輩を作って。

――そんなはずない。

結月は、机の上の付箋を指でなぞった。
紙の繊維が指先に引っかかる。
この感触は、現実だ。

栞を握る。
ひんやりしているのに、胸が熱い。

――忘れたくない。

その願いだけが、胸の真ん中で固くなった。