死なないで

「たまたま歩いてたら、外からあなたが見えて」

「僕ですか?」

「はい」
 
そのまま要の体に腕を回した。

きっと今の要は私を知らない。不審がられることもわかっていたが止められなかった。

「あの…どうしたんです?」
 
生きている。どしてもその喜びが抑えられなかった。

体に回していた手をほどき、そのまま手を握った。

「私、橙野(とうの)紗夜って言います。あなたに一目惚れしました」

要に初めて会った時、実際に言った言葉を繰り返した。

今度は絶対に死なせたりしない。

必ず助ける。

要の手を握っている手に力を込めた。

「えっと、その。僕は松村要です」
 
要は困ったように笑いながら言った。

こんな絶対に変な人にも優しい。

要がどこまでも優しかったのを思い出して、笑顔がこぼれた。

「一目惚れは嬉しいんですけど、僕はどうしたらいいんですか?」
 
あの時と、全く同じ返答に思わず吹き出してしまった。

要が不思議そうな顔をする。

「絶対に好きにさせます。だから、私を好きになってください。よろしくお願いします」

要の顔を見つめて思いっきり笑った。

要は苦いものでも食べたような顔をしていた。