死なないで

要が海汰くんを追いかけに行くのを確認してから、私は屋敷へ向かった。

庭にあったホースで全身に水をかけ、燃え上がる炎の中へ飛び込んだ。

未来で要は、自分のせいで海汰くんが人を殺したと思って罪悪感から自殺した。

海汰くんを人殺しにできない。

「月村さん!」

大声で叫んだ。煙が口の中に入ってきて息が苦しくなった。

咳ごみながら、前へ進んだ。

どこにいるの。

崩れかけそうな、階段を登った。

「月村さん!」

熱い。熱い。

それでも、名前を呼びながら、前へ進んだ。

入口から一番遠い2階の隅の部屋の扉を開けた。

ここまでは、まだ火がまわって来ていなかった。

部屋の中にある椅子の上に、月村さんが座らされていた。

急いで、駆け寄って、首元に手を当てた。脈がある。

「良かったぁ」

私は、月村さんの肩の下に手を回し立ち上がらせ、月村さんの口元にハンカチを当てた。

そしてそのまま息を止めたまま部屋飛び出し、炎の中に飛び込んだ。

もう、煙で前は見えなかった。

ただ熱い。息が苦しい。

どこへ行けばいいのかも分からなくなった。

「紗夜ー!」

どこからか、要の声がした気がした。

その声の方へ向かおうとした。

1歩踏み出した瞬間、床が抜けた。

咄嗟に、自分が下になるように、体を回した。

背中に衝撃が走った。

足に力が入らない。

もう、ほとんど息が吸えなくなった。

それでも、無理やり体を動かして、近くの窓から外へ出た。

どうやら、屋敷の裏側から出たようだった。

崖の下から、海の音が響いていた。

そっと腕をのばし、月村さんの首元に触れた。

小さく、でも確実に脈を打っていた。