夏休みの宿題はもう終わらせた。
面倒事はすぐに片付けるほうが楽である。
何よりこんな楽しいイベント事があるのに他に気を取られちゃたまらない。
夏の夜は独特な匂いがする。
それは居心地の悪い感じはしない。
ちなみに僕は甚平を着て街灯の下で待っている。
実鳥は隣で蟻を眺めていた。
「楽しいか?」
「意外と……おっでっけぇの持ってんな」
シュールな光景にカッカッと地面を叩く音が聞こえる。
2人して音の鳴る方向に目を動かすと美少女がいた。
えっぐ可愛い。
浴衣姿が似合ってるのはもちろんのこと、三つ編みがお団子になってるのも可愛いし前髪が相変わらず重たいのも可愛い。
要するに最強ってことだ。
「遅れました、すいません」
「ごめんね〜セットに時間かかっちゃって」
姫芽はフリフリの浴衣にツインテールでお人形さんみたいだ。
カシャッとシャッター音が鼓膜を揺らす。
真っ直ぐに真希ちゃんを捉える。
「凄い似合ってる」
顔に色が着く。
蚊の鳴くような声でボソッと「ありがとう」と。
僕も小さく「どういたしまして」と伝えた。
2人は盛り上がっていてこっちには見向きもしない。
少し近寄ってみる。
そっと耳打ちしてすぐに距離を取った。
「じゃあ行こっか!あたし綿あめ食べた〜い!」
「レッツゴー!」
テンションの高いカップルの背中を見ながら、僕らも歩みを進めた。
屋台の灯りが暗い街を照らす。
早速どデカいわたあめと焼きそばにたこ焼きを買った高校生カップルは1口食べるよう差し出してくる。
わたあめを貰って食べる真希ちゃんは心臓が潰れたかと思うぐらいの笑顔を浮かべていた。
「2人は何か買わないの〜?」
「あっあれ食べたいです」
雪のような白い指で示したのはりんご飴だった。
りんご飴を食べる真希ちゃんを想像したらやられそうになる。
なんかずっとやられてばっかじゃね?
姫芽が親指を突き立てながら綿あめを頬張る。
「僕も着いてく」
彼女はびっくりしたようにこくんと頷く。
笑った表情は飛んでいく蝶のように美しかった。
2人の元へ戻ったあとも、掌サイズぐらいのりんご飴をキラキラした瞳でずっと見つめている真希ちゃん。
僕は隣にあったフルーツ飴を買った。
飴の破片が喉に刺さった時は冷や汗が出たけど全く問題は無い。
自分が口をつける前に1つあげた。
最初はあたふたと首を振っていたが、ジリジリと近づけていくと観念したのか小さな口を開ける。
「美味しいですか?」
「美味しいです……」
ふふっと笑うと隣から視線を感じた。
「お熱いねぇ」
「火傷しそうだな」
全くどこを見ているのか、あぁ空を見てるのか。
いや、こっち見て言ってくれる方がまだマシだわ!そんな黄昏られても困る。
はぁっとため息を着くと袖を引っ張られた。
真希ちゃんはりんご飴を差し出してきている。
食べろということだろうか。
しかし僕のやつと違ってそう簡単に噛めるものでもない。
「ごめん、それは噛めないや。その代わりと言っちゃあなんだけど〜」
指でベビーカステラの店を指す。
「あれ一緒に食べようよ」
「……!うん!」
にへっと笑う彼女のベールの隙間から色素の薄い瞳がチラリと視界に入る。
猫みたいなツリ目が今の真希ちゃんと解釈が合わない。
全く嫌じゃないけれど。
非常に穏やかな気持ちでいると今度は逆から引っ張られる。
「蘭!射的やろうぜ」
「どうした急に……別にいいけどさ」
ヒンヤリとしていた石から腰を上げる。
「じゃあまっきーはこっち行こ〜!」
「はいはい……蘭さん」
一瞬だけ時が止まる。
「景品取ってください。私も取りますから」
そう言って少し離れた場所に姿をくらましていく。
姫芽といると姉妹のように見えたのは僕だけじゃないだろう。
「さっ、どれで勝負する?」
「数で勝負するのがいいだろ」
おじさんから銃を受け取り弾をセットした。
意外と重たくて狙いを合わせるのに何度も失敗する。
引き金を引くとキュポッと面白い音が鳴ってお菓子が倒れた。
まずは1個ゲットだ。
要領よく的を狙っていくが結局取れたのはそれだけだった。
実鳥はぬいぐるみとお菓子を抱えている。
「よく取れたな」
「コツがあるんでね」
彼が鼻を鳴らすと祭りのBGMがゆっくりと変わった。
華やかな空気がしんみりとした空気になるのに時間はかからない。
彼女達はまだ戻ってきていないようだったので、僕らはスーパーボールを掬っていた。
「あの2人っていつから仲良くなったんだろ」
「姫芽がしつこいナンパに合ってたら助けてくれたんだって」
「へぇ〜全然想像つかない」
逆だったら有り得そうなんだけど。
まぁでも事実なんだから認めるしかない。
僕も守る側じゃなくて守られる側になるのかなぁ〜なんて。
いつの間にかボウルからスーパーボールが溢れそうになっていた。
「取りすぎじゃね?」
「分かる。でもここまでは初めて」
大半は元に戻して3つ袋に詰めてもらった。
実鳥はおまけで貰ったスーパーボールを握っている。
そういえば彼はポイの扱いが下手くそだったことを思い出す。
「そろそろ戻ってるかな?」
僕より背の高い人に視界を遮られながら、2人を探す。
姫芽がぴょんぴょんと跳ねながら手を振っている。
「手、繋ぐ……か?」
「男同士で?……まぁはぐれたらやだしな」
よく分からない雰囲気の中ぎゅっと握る。
彼女より硬い手の甲に昔の思い出が走馬灯のように流れていく。
「お待たせ」
「全然大丈夫〜ってかそのぬいぐるみ何!?」
興奮気味に近づく姫芽に気づかれないようパッと手を離した。
さっきとは違う実鳥に呆気にとられる。
真希ちゃんの方に向き合って、小さなお菓子を手渡した。
「ごめん、大きいのはダメだった」
両手でしっかり包み込んだ彼女は封を開けて1つ口に運んだ。
「私甘いもの好きだから嬉しいです……ところで蘭さん」
「はっはい!」
急に声のトーンが変わって心臓が跳ね上がる。
何を言われるんだろうと額に汗が滲む。
「タメ語で……喋ってもいいですか?」
どんどん語気が小さくなっていく。
瞬きの回数がさっきより早い。
凄い緊張してるなぁ。
僕にもグワッとそれが伝わってくる。
「うん。大歓迎だよ」
嬉しさのあまりガバッと抱き締めると外野が騒がしくなった。
「もうチューしたらいいのに〜」
「そーだそーだ」
「外野は黙ってて!」
はぁとため息をつこうとするのをグッとこらえる。
その後、僕達はまだ回っていないお店を制覇するように足を早めた。
面倒事はすぐに片付けるほうが楽である。
何よりこんな楽しいイベント事があるのに他に気を取られちゃたまらない。
夏の夜は独特な匂いがする。
それは居心地の悪い感じはしない。
ちなみに僕は甚平を着て街灯の下で待っている。
実鳥は隣で蟻を眺めていた。
「楽しいか?」
「意外と……おっでっけぇの持ってんな」
シュールな光景にカッカッと地面を叩く音が聞こえる。
2人して音の鳴る方向に目を動かすと美少女がいた。
えっぐ可愛い。
浴衣姿が似合ってるのはもちろんのこと、三つ編みがお団子になってるのも可愛いし前髪が相変わらず重たいのも可愛い。
要するに最強ってことだ。
「遅れました、すいません」
「ごめんね〜セットに時間かかっちゃって」
姫芽はフリフリの浴衣にツインテールでお人形さんみたいだ。
カシャッとシャッター音が鼓膜を揺らす。
真っ直ぐに真希ちゃんを捉える。
「凄い似合ってる」
顔に色が着く。
蚊の鳴くような声でボソッと「ありがとう」と。
僕も小さく「どういたしまして」と伝えた。
2人は盛り上がっていてこっちには見向きもしない。
少し近寄ってみる。
そっと耳打ちしてすぐに距離を取った。
「じゃあ行こっか!あたし綿あめ食べた〜い!」
「レッツゴー!」
テンションの高いカップルの背中を見ながら、僕らも歩みを進めた。
屋台の灯りが暗い街を照らす。
早速どデカいわたあめと焼きそばにたこ焼きを買った高校生カップルは1口食べるよう差し出してくる。
わたあめを貰って食べる真希ちゃんは心臓が潰れたかと思うぐらいの笑顔を浮かべていた。
「2人は何か買わないの〜?」
「あっあれ食べたいです」
雪のような白い指で示したのはりんご飴だった。
りんご飴を食べる真希ちゃんを想像したらやられそうになる。
なんかずっとやられてばっかじゃね?
姫芽が親指を突き立てながら綿あめを頬張る。
「僕も着いてく」
彼女はびっくりしたようにこくんと頷く。
笑った表情は飛んでいく蝶のように美しかった。
2人の元へ戻ったあとも、掌サイズぐらいのりんご飴をキラキラした瞳でずっと見つめている真希ちゃん。
僕は隣にあったフルーツ飴を買った。
飴の破片が喉に刺さった時は冷や汗が出たけど全く問題は無い。
自分が口をつける前に1つあげた。
最初はあたふたと首を振っていたが、ジリジリと近づけていくと観念したのか小さな口を開ける。
「美味しいですか?」
「美味しいです……」
ふふっと笑うと隣から視線を感じた。
「お熱いねぇ」
「火傷しそうだな」
全くどこを見ているのか、あぁ空を見てるのか。
いや、こっち見て言ってくれる方がまだマシだわ!そんな黄昏られても困る。
はぁっとため息を着くと袖を引っ張られた。
真希ちゃんはりんご飴を差し出してきている。
食べろということだろうか。
しかし僕のやつと違ってそう簡単に噛めるものでもない。
「ごめん、それは噛めないや。その代わりと言っちゃあなんだけど〜」
指でベビーカステラの店を指す。
「あれ一緒に食べようよ」
「……!うん!」
にへっと笑う彼女のベールの隙間から色素の薄い瞳がチラリと視界に入る。
猫みたいなツリ目が今の真希ちゃんと解釈が合わない。
全く嫌じゃないけれど。
非常に穏やかな気持ちでいると今度は逆から引っ張られる。
「蘭!射的やろうぜ」
「どうした急に……別にいいけどさ」
ヒンヤリとしていた石から腰を上げる。
「じゃあまっきーはこっち行こ〜!」
「はいはい……蘭さん」
一瞬だけ時が止まる。
「景品取ってください。私も取りますから」
そう言って少し離れた場所に姿をくらましていく。
姫芽といると姉妹のように見えたのは僕だけじゃないだろう。
「さっ、どれで勝負する?」
「数で勝負するのがいいだろ」
おじさんから銃を受け取り弾をセットした。
意外と重たくて狙いを合わせるのに何度も失敗する。
引き金を引くとキュポッと面白い音が鳴ってお菓子が倒れた。
まずは1個ゲットだ。
要領よく的を狙っていくが結局取れたのはそれだけだった。
実鳥はぬいぐるみとお菓子を抱えている。
「よく取れたな」
「コツがあるんでね」
彼が鼻を鳴らすと祭りのBGMがゆっくりと変わった。
華やかな空気がしんみりとした空気になるのに時間はかからない。
彼女達はまだ戻ってきていないようだったので、僕らはスーパーボールを掬っていた。
「あの2人っていつから仲良くなったんだろ」
「姫芽がしつこいナンパに合ってたら助けてくれたんだって」
「へぇ〜全然想像つかない」
逆だったら有り得そうなんだけど。
まぁでも事実なんだから認めるしかない。
僕も守る側じゃなくて守られる側になるのかなぁ〜なんて。
いつの間にかボウルからスーパーボールが溢れそうになっていた。
「取りすぎじゃね?」
「分かる。でもここまでは初めて」
大半は元に戻して3つ袋に詰めてもらった。
実鳥はおまけで貰ったスーパーボールを握っている。
そういえば彼はポイの扱いが下手くそだったことを思い出す。
「そろそろ戻ってるかな?」
僕より背の高い人に視界を遮られながら、2人を探す。
姫芽がぴょんぴょんと跳ねながら手を振っている。
「手、繋ぐ……か?」
「男同士で?……まぁはぐれたらやだしな」
よく分からない雰囲気の中ぎゅっと握る。
彼女より硬い手の甲に昔の思い出が走馬灯のように流れていく。
「お待たせ」
「全然大丈夫〜ってかそのぬいぐるみ何!?」
興奮気味に近づく姫芽に気づかれないようパッと手を離した。
さっきとは違う実鳥に呆気にとられる。
真希ちゃんの方に向き合って、小さなお菓子を手渡した。
「ごめん、大きいのはダメだった」
両手でしっかり包み込んだ彼女は封を開けて1つ口に運んだ。
「私甘いもの好きだから嬉しいです……ところで蘭さん」
「はっはい!」
急に声のトーンが変わって心臓が跳ね上がる。
何を言われるんだろうと額に汗が滲む。
「タメ語で……喋ってもいいですか?」
どんどん語気が小さくなっていく。
瞬きの回数がさっきより早い。
凄い緊張してるなぁ。
僕にもグワッとそれが伝わってくる。
「うん。大歓迎だよ」
嬉しさのあまりガバッと抱き締めると外野が騒がしくなった。
「もうチューしたらいいのに〜」
「そーだそーだ」
「外野は黙ってて!」
はぁとため息をつこうとするのをグッとこらえる。
その後、僕達はまだ回っていないお店を制覇するように足を早めた。

