Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する


その日の夜。

家族LINEとは別に、希の個人LINEに通知。
『で?いつ来るんだ?』

シンプル。
絵文字なし。

希、天井を見る。

早い。

妹からの追撃。

『パパ、もうゴルフ誘う気満々だよ』

『旬さんスコアいくつ?って聞いてる』

希、即返信。

『旬も私も忙しいから、そのうちね』

既読。

すぐに返ってくる。

『ゴルフは朝早いから大丈夫だろ』

……逃げ場なし


希がスマホを見せる。

「来た?」

「うん。“いつ来るんだ?”だって」

旬、苦笑い。

「早いな」

「しかもゴルフ前提」

旬、少し考える。

「いきなりゴルフでいいのかな。まずはご挨拶じゃなくて?」

真面目。

「だよね?」

「普通はそうだよな」

希がソファに座りながら言う。

「でもね、パパにとってゴルフは“面接”みたいなものだから」

「面接」

「18ホール、逃げ場なし。性格全部出るでしょ?」

旬、静かに笑う。

「なるほど」

少し間。

「……受けて立つか」

希がじっと見る。

「大丈夫?」

旬はいつもの落ち着いた声で言う。

「俺、希のこと本気だから」

その一言で、空気が変わる。

「ちゃんと挨拶もする。でも、ゴルフも逃げない」

希、胸の奥がじんわりする。

「パパゴルフうるさいよ」

「うん」

「急に“ドライバー何使ってる?”とか聞くよ」

「答える」

「OB出したらめちゃくちゃいじられるよ」

「出さないように頑張る」

真顔。

希、吹き出す。

「もう好き」

旬が少し照れながら言う。

「まだ何もしてない」

「向き合ってくれる姿勢が好き」

その瞬間、またLINE。

父。

『来週日曜、空けとけ』

希と旬、画面を見る。

既に日時指定。

旬、ゆっくり言う。

「……行くか」

希が深呼吸。

「うん。木村家、最難関ステージ」

でもきっと。

海とゴルフを愛する自由人の父は、
“娘が選んだ男”をちゃんと見る。