「周りは?」
旬が聞くと、希は少し肩をすくめた。
「浮いた話ひとつない私のこと、だいぶ心配してた」
旬が小さく笑う。
「そうなんだ」
「ほんとに何もなかったんだ」
「いまだに心配されてるけど」
少し照れたように、視線を逸らす。
「私に素敵な彼氏ができたことも知らないで」
旬の眉が上がる。
「素敵?」
「うん」
即答。
「すっごくかっこよくて優しいひと」
旬の喉が、かすかに熱を持つ。
「誰にも言ってないの?」
「うん」
「なんで」
希は旬を見る。
少しだけ照れている。
「本気すぎると、言うの怖くない?」
その言葉に、旬は一瞬黙る。
わかる。
軽い相手なら、笑って話せる。
でも、本命ほど、口に出すのが怖い。
「本命ほど、言えないってやつ?」
「そう」
希は小さく笑う。
「もしダメになったら、みんなに説明するのつらいじゃん」
旬はゆっくり体を起こす。
ソファーの上、希に影が落ちる。
「ダメにしないけど」
低い声。
希が目を瞬く。
「何が起こるかわかんないでしょ」
「わかる」
「なんで」
旬は真顔で言う。
「俺が本気だから」
空気が変わる。
希の心臓が、速く打つ。
「そんな簡単に言う?」
「簡単じゃない
旬は笑わない。
「今までで一番覚悟いる」
希の呼吸が浅くなる。
「なんで」
「希は、一人でも生きていける人だから」
その言葉に、希は静かになる。
強い。
自立している。
誰かに寄りかからなくても立っていられる人。
「依存じゃないでしょ?」
「うん」
「選んで隣にいる」
「……うん」
旬は、そっと希の頬に触れる。
「だから俺も、選び続ける」
希の目が、じわりと潤む。
「周りが心配してるんだろ?」
「うん」
「じゃあ早く安心させな?」
「え?」
「素敵な彼氏、ちゃんといるって」
希が吹き出す。
「自分で言う?」
「言う」
「図々しい」
「事実だろ」
希は、笑いながら旬の胸に顔を埋める。
「ほんとにできると思ってなかった」
小さな声。
「また好きになるなんて」
旬は、髪をゆっくり撫でる。
「俺も」
「嘘」
「ほんと」
少しだけ笑う。
「こんなに怖いのに、手放したくないって思うの初めて」
希は、ゆっくり顔を上げる。
「じゃあさ」
「うん」
「ちゃんと続けようね」
“続けよう”
その言葉は甘いだけじゃない。
覚悟を含んだ、大人の約束。
旬は、静かに頷く。
「続ける」
それは誓いだった。
そして、ふと頭をよぎる。
——周りが心配するほど、希は一人で立ってきた。
ロビーで感じた、あの視線。
偶然か。
それとも。
けれど今は、まだ言わない。
この温度を、壊したくないから。
雪は、窓の向こうで静かに降り続いていた。
旬が聞くと、希は少し肩をすくめた。
「浮いた話ひとつない私のこと、だいぶ心配してた」
旬が小さく笑う。
「そうなんだ」
「ほんとに何もなかったんだ」
「いまだに心配されてるけど」
少し照れたように、視線を逸らす。
「私に素敵な彼氏ができたことも知らないで」
旬の眉が上がる。
「素敵?」
「うん」
即答。
「すっごくかっこよくて優しいひと」
旬の喉が、かすかに熱を持つ。
「誰にも言ってないの?」
「うん」
「なんで」
希は旬を見る。
少しだけ照れている。
「本気すぎると、言うの怖くない?」
その言葉に、旬は一瞬黙る。
わかる。
軽い相手なら、笑って話せる。
でも、本命ほど、口に出すのが怖い。
「本命ほど、言えないってやつ?」
「そう」
希は小さく笑う。
「もしダメになったら、みんなに説明するのつらいじゃん」
旬はゆっくり体を起こす。
ソファーの上、希に影が落ちる。
「ダメにしないけど」
低い声。
希が目を瞬く。
「何が起こるかわかんないでしょ」
「わかる」
「なんで」
旬は真顔で言う。
「俺が本気だから」
空気が変わる。
希の心臓が、速く打つ。
「そんな簡単に言う?」
「簡単じゃない
旬は笑わない。
「今までで一番覚悟いる」
希の呼吸が浅くなる。
「なんで」
「希は、一人でも生きていける人だから」
その言葉に、希は静かになる。
強い。
自立している。
誰かに寄りかからなくても立っていられる人。
「依存じゃないでしょ?」
「うん」
「選んで隣にいる」
「……うん」
旬は、そっと希の頬に触れる。
「だから俺も、選び続ける」
希の目が、じわりと潤む。
「周りが心配してるんだろ?」
「うん」
「じゃあ早く安心させな?」
「え?」
「素敵な彼氏、ちゃんといるって」
希が吹き出す。
「自分で言う?」
「言う」
「図々しい」
「事実だろ」
希は、笑いながら旬の胸に顔を埋める。
「ほんとにできると思ってなかった」
小さな声。
「また好きになるなんて」
旬は、髪をゆっくり撫でる。
「俺も」
「嘘」
「ほんと」
少しだけ笑う。
「こんなに怖いのに、手放したくないって思うの初めて」
希は、ゆっくり顔を上げる。
「じゃあさ」
「うん」
「ちゃんと続けようね」
“続けよう”
その言葉は甘いだけじゃない。
覚悟を含んだ、大人の約束。
旬は、静かに頷く。
「続ける」
それは誓いだった。
そして、ふと頭をよぎる。
——周りが心配するほど、希は一人で立ってきた。
ロビーで感じた、あの視線。
偶然か。
それとも。
けれど今は、まだ言わない。
この温度を、壊したくないから。
雪は、窓の向こうで静かに降り続いていた。
