旬が初めて家に来た日。
キッチンの写真。
少し散らかった調味料と、湯気の立つ鍋。
その下に、整った文字。
――彼の匂いがまだ部屋に残ってる。
はじめて、誰かのために料理をした。
嬉しいのに、少し怖い。
ちゃんと恋をしている、のかな。
旬の視線が、そこで止まる。
喉の奥が、わずかに熱い。
「この日……緊張してた?」
小さく聞く。
希は肩をすくめる。
「してたよ。いきなり家にさそっちゃったし。包丁持つ手、ちょっと震えてた」
「気づかなかった」
「気づかれたくなかった」
旬は、ゆっくり息を吐く。
さらにスクロール。
ドライブで行った海。
風で揺れる水平線。
“景色より横顔ばっかり見てた。”
旬の喉が、少しだけ詰まる。
「それはずるいだろ……」
「なんで?」
「俺、運転中」
希が笑う。
LINEのスクリーンショットはない。
でも、言葉は残っている。
“止まらない会話。寝不足確定。”
“おやすみって言ったのに、また通知。”
“嬉しい。”
一つ一つが、細かい。
特別なイベントじゃない。
何気ない夜のやり取り。
希はちゃんと、その瞬間を残している。
旬はゆっくりとスクロールを続ける。
隣で、希が小さく肩をぶつける。
「もういいんじゃない?」
「まだ」
即答。
またスクロール。
ソファーとブランケットの写真。
少し乱れたクッション。
“隣で映画。内容より体温。”
旬の指が止まる。
画面を持つ手が、わずかに強くなる。
静かに、画面を見つめる
言葉にしなくても、そこに全部ある。
旬はスマホをゆっくり下ろす。
そして、希を見る。
目の奥が、いつもより深い。
「俺さ」
低い声。
「ちゃんと責任取らないとだな」
「なにそれ」
笑おうとする希の頬に、旬の手が触れる。
「こんなふうに好きでいてくれる人、手放したら一生後悔する」
その言葉は、軽くない。
希の胸が、じわりと熱くなる。
「好きでいい?」
小さく聞く。
旬は頷く
「いいよ」
そして、ゆっくり額を合わせる。
「ちゃんと恋してるよ」
あの日、キッチンで震えていた手も。
海で横顔を盗み見ていた視線も。
眠れない夜の通知も。
全部、今ここにつながっている。
キッチンの写真。
少し散らかった調味料と、湯気の立つ鍋。
その下に、整った文字。
――彼の匂いがまだ部屋に残ってる。
はじめて、誰かのために料理をした。
嬉しいのに、少し怖い。
ちゃんと恋をしている、のかな。
旬の視線が、そこで止まる。
喉の奥が、わずかに熱い。
「この日……緊張してた?」
小さく聞く。
希は肩をすくめる。
「してたよ。いきなり家にさそっちゃったし。包丁持つ手、ちょっと震えてた」
「気づかなかった」
「気づかれたくなかった」
旬は、ゆっくり息を吐く。
さらにスクロール。
ドライブで行った海。
風で揺れる水平線。
“景色より横顔ばっかり見てた。”
旬の喉が、少しだけ詰まる。
「それはずるいだろ……」
「なんで?」
「俺、運転中」
希が笑う。
LINEのスクリーンショットはない。
でも、言葉は残っている。
“止まらない会話。寝不足確定。”
“おやすみって言ったのに、また通知。”
“嬉しい。”
一つ一つが、細かい。
特別なイベントじゃない。
何気ない夜のやり取り。
希はちゃんと、その瞬間を残している。
旬はゆっくりとスクロールを続ける。
隣で、希が小さく肩をぶつける。
「もういいんじゃない?」
「まだ」
即答。
またスクロール。
ソファーとブランケットの写真。
少し乱れたクッション。
“隣で映画。内容より体温。”
旬の指が止まる。
画面を持つ手が、わずかに強くなる。
静かに、画面を見つめる
言葉にしなくても、そこに全部ある。
旬はスマホをゆっくり下ろす。
そして、希を見る。
目の奥が、いつもより深い。
「俺さ」
低い声。
「ちゃんと責任取らないとだな」
「なにそれ」
笑おうとする希の頬に、旬の手が触れる。
「こんなふうに好きでいてくれる人、手放したら一生後悔する」
その言葉は、軽くない。
希の胸が、じわりと熱くなる。
「好きでいい?」
小さく聞く。
旬は頷く
「いいよ」
そして、ゆっくり額を合わせる。
「ちゃんと恋してるよ」
あの日、キッチンで震えていた手も。
海で横顔を盗み見ていた視線も。
眠れない夜の通知も。
全部、今ここにつながっている。
