Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する

「ねぇ」

希の声が、少しだけ真面目になる。

「ん?」

「旬、いつから私のこと好きだったの?」

不意打ち。

旬は一瞬だけ笑う。

「急だな」

「知りたい」

視線はまっすぐ。
逃がさない目。

旬は少しだけ天井を見上げる。

記憶を辿るみたいに。

「最初に会った日。うちのビルで。」

希の目が丸くなる。

「早すぎ」

「ほんと。自分でも引いた」

小さく笑う。

「あれ、一目惚れってやつなのかな」

声が、少しだけ柔らかくなる。

柔らかい布の中でスペース整えて佇んでる人がいて、

「そのとき思った。あ、この人好きだわって」

あまりにも自然な告白。

希は、しばらく何も言えない。

自分は覚えていない一瞬を、
旬はずっと覚えていた。

雪は、窓の向こうで静かに積もっている。

ソファーの距離は、昨日よりもずっと近い。

そして今、
二人の時間は、あの日からちゃんと繋がっていた。

あの日のことを、旬は静かに語りはじめた。

「作られた世界観が凄くてさ。空間の温度も、光の落ち方も、全部計算されてて」

ゆっくりと思い出すように。

「作った人に挨拶したら、希だった」

希は少し照れたように笑う。

「でも名刺も交換しかしてないよね。なんかあの日バタバタだったし」

「うん。ほとんど話してない」

旬は頷く。

「なのにさ」

少し間を置く。

「あの日の夜、希のこと考えて寝られなかった」

希の目が、揺れる。