Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する

旬の目が揺れる。
ほんの一瞬、少年のような柔らかい表情に変わった。

世界が二人だけになる、静かで、確かな瞬間だった。

希は手の中のネックレスをじっと見つめる。

「つけていい?」

頷く希に、旬は自然に立ち上がる。
ゆっくりと希の後ろへ回り、首筋にひんやりとした感触を伝える。
指先が少し震えるのを、希は感じる。

留め具を止めるとき、二人の距離はごくわずか。
希の呼吸がいつもより浅くなる。

旬はそっと前に戻り、ネックレスを一度眺めたあと、希を見つめる。

「やっぱり似合う」

誇らしさと、安堵と、独占欲。
すべてが混ざり合ったその瞳に、希は小さく笑う。

「これで、私の?」

旬は即答する。

「最初から」

低く、でも力強く。
それは二人だけの約束のような言葉だった。

いつの間にか雪は静かに止んでいた。

空一面に星が瞬いている。
恐ろしいほど澄んだ夜空。

「……すご」

旬も隣で空を見上げる。
「東京じゃ見えないな」

希はスマホを取り出し、何枚もシャッターを切る。
星の輝き、雪の残る街並み
その瞬間を、誰にも見せない小さな記録として残すために。

“今日の星は、息が止まりそうだった”

ふと心に浮かぶその言葉に、胸が少し熱くなる。
目の前の静けさと美しさが、彼女の胸にそっと沁み渡る夜だった。