同じ夜。
旬もクローゼットの前に立っている。
ネクタイを外し、
スーツをハンガーに掛ける。
スーツじゃない方がいい。
仕事の延長にしたくない。
でも、軽すぎるのも違う。
Tシャツは違う。
ジャケットは固い。
ニットは……どうだ。
鏡の前で着てみる。
悪くない。
でも、彼女はどう思うだろう。
(考えすぎか)
小さく笑う。
仕事では即断即決なのに。
たった一着で、こんなに迷う。
本気で向き合いたい。
だからこそ、
どう見られるかが気になる。
結局、落ち着いた色のニットと
シンプルなコート。
飾らない。
でも、手は抜かない。
ベッドサイドにスマホを置く。
彼女の名前が、そこにある。
メッセージは送らない。
明日、会うから。
画面を伏せる。
同じ夜。
同じように迷いながら。
ふたりは、それぞれの部屋で
少しだけ緊張している。
まだ恋人ではない。
でももう、
特別な人になり始めている。
