Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する

映画の日までの数日。

メッセージは多くない。

おはようも、
おやすみもない。

“習慣”にしない。

でも、毎日一往復はある。

天気の話。

【今日は風が強いですね】

【現場の図面が飛びそうでした】

読んだ本。

【最近、建築家のエッセイを読み返していて】

【どの部分が好きですか】

仕事で見た景色。

【夕方の六本木、空がきれいでした】

【写真、撮ればよかった】

多くは語らない。

深掘りもしない。

でも、途切れない。

それが、心地いい。

無理に距離を縮めない。

でも、離れない。

余白を保ったまま、
確かに続いている。


映画前夜。

希はクローゼットの前で立ち止まる。

ハンガーに並ぶ服を、
一本ずつ指でずらす。

何着て行こう。

どういうのがタイプだろ。

そもそも、彼の私服どんな感じだろ。

(気合い入ってるみたいじゃない?)

自分にツッコミを入れる。

一着目。

少し華やかすぎる。

脱ぐ。

二着目。

落ち着きすぎている。

戻す。

また出す。

鏡の前で回ってみる。

ため息。

結局、最初に手に取ったワンピース。

シンプルで、少しだけラインがきれいなもの。

(これでいい)

“頑張ってないけど、ちゃんとしてる”

そのバランス。

髪をほどくか、まとめるか。

また迷う。

こんなふうに悩むのは、いつぶりだろう。

ベッドに座り、スマホを見る。

メッセージはない。

でも、それでいい。

明日会える。

その事実だけで、十分。