Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する

朝早くLINEの通知。

【今週、時間ありますか】

無駄がない。

挨拶も、前置きもない。

それが彼らしい。

希はスマホを持ったまま、しばらく画面を見つめる。

焦らされているわけじゃない。

でも、この一行には
“次”へ進む意志がある。

偶然ではなく、約束。

【あります】

送信。

すぐに既読がつく。

間を置かないのも、彼らしい。

【映画、行きませんか】

直球。

食事でもなく、
あのバーでもなく、
映画。

隣に座る距離。

でも、暗闇。

会話はできない。

触れようと思えば触れられる。

でも、何もしなくても成立する時間。

希の胸が静かに高鳴る。

選んだのは彼だ。

距離を縮めるのではなく、
ただ“並ぶ”時間。

【いいですね】

送信してから、指先が少し冷たい。

断る理由はなかった。

けれど、これは一線を越える一歩だと
ちゃんとわかっている。

すぐに返事がくる。
【土曜、19時。銀座。チケット取ります】

決定事項のように。

でも押しつけがましくない。

【お願いします】

短いやり取り。

それだけなのに、
呼吸が少し浅くなる。