孤高の剛腕大富豪は滾る愛を知って、ママと息子をこの手で囲い落とす

そして年が明けた一月。私は大きな期待と小さな不安を胸に抱え、オランダへ旅立った。

オランダに到着した日は、滞在先のアパートに荷物を置いた後、出張期間のみオフィスとして使用する部屋を訪れ、準備を整えて一日を終えた。

翌日から五日間は建設途中の工場の視察、現地の病院や代理店との打ち合わせを繰り返しあっという間に時間が過ぎた。
入社して医療機器の知識を学ぶときに、いずれは英語で話せるようにならないといけないと先読みをし、自主的に英語の業界用語を勉強していた。
それが功を奏し、今回の出張でも言語の弊害で会話を中断することなく、スムーズに打ち合わせを続けられた。


「辻本さんがいてくれて本当に助かる!この頑張りは日本に帰ったら、私からちゃんと部長に報告するからね!」


私より二年先輩の大東(だいとう)さんはオランダ出張に選ばれたもうひとりの女性で、誰にでも分け隔てなく接する笑顔が素敵な人だ。そんな彼女にこうして褒められると、今までの頑張りが報われたように感じられて心の中が温かくなる。

今日は二か所で打ち合わせがあったため、女性ふたりと男性ふたりで別れて行動をしていた。
男性ふたりもコミュニケーション能力に長けていて、いつも気さくに話しかけてくれるのでとても心強い。


「明日は休みだけど、どこか出かけるの?よかったら一緒に夕食でもどう?」

大東さんからまさかのお誘いを受け、私はうれしさのあまり「ご飯行きたいです!」と食い気味に返事をした。


「じゃあ、他のふたりも誘って決起会でも開くのはどう?パーッとみんなで士気を上げよう」


大東さんは鞄からスマホを取り出し、軽快になにかを打ち込む。その一分後に着信音が鳴った。
大東さんは届いたメッセージを確認すると、「ふたりとも明日来れるって」と口にした。


「ご飯はなにが食べたい? せっかくならオランダ料理にする?」

「いいですね。特に嫌いなものはないので、なんでも大丈夫です」

「飛行機の中でよさそうなオランダ料理のお店を何件かリサーチしてたから、適当に予約しておくね。時間は六時くらいでいい?」


私が「分かりました」と答えると、大東さんは一分も経たないうちに「六時に予約できたから、お店のマップ送っておく」と言い、すぐに私のスマホに場所を送ってくれた。
この短時間でご飯の約束を決め、男性ふたりを誘ってオッケーももらったと思ったらお店の予約まで済ませ、その位置情報まで共有してくれた。