孤高の剛腕大富豪は滾る愛を知って、ママと息子をこの手で囲い落とす

私の名は辻本音羽(つじもとおとは)
オシャレにはいっさい興味がなく、胸のあたりまで伸びた髪は、これまで染めたこともパーマをかけたこともない。漆黒のストレートだ。性格も見た目と同様、地味なほう。
真面目なのが取り柄で、一度決めたことは最後までやり遂げようとする忍耐力はある。

四年制の大学を卒業して新卒で医療機器を製造する会社の本社に入社し、入社後は営業アシスタントをしながら自社開発の医療機器について学んだ。
知識がついた二年目から営業として独り立ちし、取引先である病院や代理店に自社製品の販売、説明、アフターサービスをしている。


そんな波ひとつない海のような私の人生に大きな波が起こったのは、社会人になって四年目の十二月。

オランダに自社工場の新設が決まり、現地調査と基盤づくりを理由とした四か月間の出張に私を含めた営業職の四人が選ばれたのだ。
私の他には男性ふたりと女性ひとりで、彼らは常に営業成績トップを争っている。社内でも一目置かれている三人だ。

私も頑張って上位に食い込む月もあるが、トップ争いに加わるには程遠い。
そんな私が三人と一緒に選ばれた理由は、英語が話せるからだと後で部長に教えてもらった。

昔から英語が好きで大学に入ると観光客が多く来るカフェでアルバイトを始め、三年生のときに一か月の短期留学を経験。
カフェのアルバイトは卒業するまで四年間続け、社会人になってからは週に二回の英会話の受講をずっと続けているので、英語には自信がある。

とはいえ、四か月もの長期間、異国の地で過ごした経験がないため不安がないわけではない。
『オランダの事業が上手くいくかどうかはこの現地調査にかかっているから、よろしく頼むな』と社長直々に言われ、今回の出張がどれだけ重要なのかを痛感した。

しかし、せっかく選んでくれたのだからなんとしてでも期待には応えたい。
社運がかかっているからこそ必ず成功させてみせる!