「琴葉」
耳元で吐息交じりに低く囁かれ、身体がびくりと反応した。思わず理玖の方を見たら、リップ音を立てて軽くキスをされる。そのまま、流れるように琴葉の手を自分の首に回し、横抱きに抱え上げる。
琴葉は、耳の裏まで脈打っているのを感じながら、理玖を見上げた。ドキドキしすぎて心臓が痛い。でも、これから、ついに理玖と最後まで愛し合えるのかもしれない。
緊張したり、不安になったり、期待したり・・・・・・布団に優しく横たえられるまでの短い間に、いろいろな考えが頭の中を駆け巡っていった。
――理玖くんは、どう思っているんだろう。先に進みたいと、思ってる?
部屋の照明が落とされて、月明かりだけが琴葉たちを照らす。月に照らされた理玖は幻想的で、目が離せない。
理玖は琴葉の顔の横に両手をついて、琴葉を見下ろした。前髪がはらりと額に落ちて、真剣な目で真っ直ぐに射抜いている瞳を半分隠す。
「・・・・・・理玖くん」
声が、少し掠れていた。理玖の手が琴葉の頬に触れて、優しく撫でる。くすぐったいけれど、温かくて気持ちが落ち着いた。
琴葉は理玖の手に自分の手を重ねて、空いている手を理玖の首に回した。理玖を引き寄せて、今度は、長く唇を重ねる。
一瞬、理玖の身体がぴくりと動いた。自分からこんな大胆なことをしたことがないので、驚かせてしまったのかと思ったけれど、すぐに琴葉に応えるように、顔の角度を変えて、頭を撫でる。
誘い込むように薄く口を開ける理玖に、琴葉は逡巡した。薄く目を開けると、熱を帯びた鋭い瞳と目が合い、心臓が口から飛び出てくるのではないかと思うくらい、ドキッとした。
――いつも、こんな表情で私のことを翻弄してたのかな
そんなことを頭の片隅で思っていたら、理玖の瞳が柔らかくなり、閉じられる。琴葉も目を閉じたら、理玖の舌が忍び込んできた。
「・・・・・・んっ・・・・・・」
理玖が、歯列をなぞる。背中がゾクゾクして震えていると、理玖が戻っていってしまった。かと思ったら、角度を変えて再び侵入してくる。
今度は琴葉の舌をゆっくりたどり、琴葉を導くように口内に誘い込む。自分から、したことはない。だけど、理玖ともっと深く触れ合いたいと、ずっと思っている。
少したじろいだけれど、琴葉は両手を理玖の首にしっかり巻きつけると、意を決して忍び込んだ。
いつも理玖がしているように、歯列をなぞり、それから舌を絡める。すると、理玖の指が、琴葉の髪をゆっくり梳いた。その手つきが、どこか愛おしそうで、それどころではないのに、ふふっと笑いそうになってしまった。
