清く正しく美しく

 

 頭から、月島くんが言ってくれた言葉が離れない。
 ふわふわした気持ちのまま次の日の放課後を迎えた。



 琴葉が机から立ち上がると、佐藤さんと木下さんが近くに来て拝んできた。



「ごめん!天童さん。今日も用事があって。掃除当番代わってくれないかな?」




 琴葉は、凪が音を立てて立ち上がる気配を感じた。凪は琴葉のために怒ってくれる。でも、凪にそんなことをさせたくない。




 琴葉が口を開こうとしたら、目の前に腕がスッと伸びてきた。




「ごめんね、天童さんには先約があるんだ」




 思わぬ言葉に見上げると、理玖が琴葉を見て笑いかけてきた。琴葉のバッグをサラッと持つと、琴葉の腕を優しく掴んで走り出す。




 佐藤さんと木下さんの驚いた顔が見え、背後から「琴葉!?」と凪の焦った声が飛んできた。



「えっ、月島くん!?」




 理玖は振り返って、少しだけ申し訳なさそうな顔をして言った。



「急にこんなことしてごめんね。でも、今日は俺に付き合って」




 理玖に腕を引かれるまま走って、胸が少しざわついた。どうして、と戸惑う気持ちが大きいけれど、少し嬉しいと思ってしまう。



「ごめんね。強引だったよね?」




 校門を出て少し出たところで、理玖は足を止めた。



「いえ、助けてくれたんですよね?ありがとうございます」



「何でだろう。何か・・・・・・放っておけなくて」




 月島くんは困ったように笑ったと思ったら、急に難しい顔に変わった。琴葉も、どうしたらいいのか分からない。さっきから激しく飛び跳ねる心臓の音が聞こえてしまいそうだ。



「・・・・・・天童さんともう少し話したい。いいかな?」




 首を傾げて尋ねてくる理玖に、琴葉は蚊の鳴くような声で「はい」と頷くことしかできなかった。










*****







 教室から出ると、女子たちがざわついていた。
女子たちの視線を辿ると、月島理玖が女の子の腕を引きながら走っている。



「なあ、月島理玖の隣にいる女の子、誰?」



「ああ、天童さんだよ。テストで学年1位の優等生」




「ふ~ん、あの子が天童琴葉なんだ」




 学校イチの王子様と学年イチ真面目な優等生ねえ。
 面白そうじゃん。豆原旭は口の端を上げた。