花束に囲まれた君が残したもの。

「それでクワはどうしたの?!」

最初に声を荒らげたのはハギだった。
今まで見たことの無い目つきで看護師を睨む。
窓の外の葉音が病室に響く。
 
「…。」
看護師は黙りだった。

するとヒマの携帯電話が鳴る。

「もしもし…シーちゃん?」

電話に出ると電話の後ろからヒラやユリちゃんの声が聞こえた。
ヒマは急いで音声をスピーカーにした。
 
「山の方なんか赤くなってるんだけど…もしかして…俺らの山小屋じゃないか!?」「今消防車呼んでる!!」

電話の後ろから焦る声が聞こえる。
 
「ってことなんだけどヒマちゃん今どこにいる??私たち今山小屋向かってるんだけど来れないかな。」
 
いつも落ち着きのあるシーちゃんも声も荒ぶっていた。
そんな様子にヒマも動揺しているようだった。

「ヒマ、携帯こっちに近づけて。」
僕は急いで携帯に向かって大声で話した。
 
「おい!ヒラ!聞こえるか!山小屋にクワがいる!急げ!!!」
 
「…まじか!」

ヒラがそういうと携帯の通話が切れた。

「僕らも行くぞ。」

僕はヒマの方を見て強めの口調で言った。
 
看護師のことは後回しだ。
何より先に状況を確認しないといけない。
どっと冷や汗が出ていた。
部屋を飛び出ようとした瞬間、腕を掴まれた。

「…待って。」

そう言ったのはツユちゃんだった。

「行かなきゃ。」

僕は手を振り離そうとした。
しかしか細い腕でしっかりと掴まれていて振りほどけなかった。
 
「離さない。私達も行かせて。」

ツユちゃんはそういいながら車椅子から腰をあげていたが、よろめいてベットの手すりで体を支えていた。

「一生のお願い。手伝ってほしい。」
彼女の目は真剣だった。

同時にハギもベットから降りる。
久しぶりに動いたのもあってハギは倒れそうになったが、近くにいた看護師が咄嗟に手を取っていた。ハギも看護師も一瞬びっくりした顔をしていた。
 
「こんなんだけど一生のお願い。…僕も連れてって。」

「僕はクワと一緒にいて、勝手にクワが前を向けたと思ってた。でもそれは僕の理想を勝手にクワに結びつけてただけだ。今こんな状況だからこそ、僕らはどんな事があっても立ち直って行けるって何度でも伝えないといけないんだ。」

「私もそうだよ。直接大丈夫だよって言わないといけない。」

ハギもツユちゃんも真剣な眼差しで僕とヒマを見る。
僕は少し考えたが、答えはヒマが先に出していた。

「ツユちゃん肩に手を回して。行くよ!」

そう言ってヒマとツユちゃんはゆっくり病室を出ていく。
病室を出ていく時、ヒマはちらっと僕の方を見た。

「…ほら。」

僕はベットの近くでしゃがんで、ハギを背負う準備をした。

「ありがとね。」
ハギは優しい声で僕に言った。

「いいから。行くぞ。」

僕らは病室を後にした。
一筋の月明かりが看護師を照らしていた。