いや、まじで勘弁してくれ・・・


「それって絶対・・・?」


「まぁ強制はしなぁ――」


「絶対ね」


一瞬安堵しかけたところで姫宮さんに落とされた。


「ミコト、別に強制はできないじゃん?」


せめて千里くんが反論してくれるのが救いだ。


「A組は絶対そうするべきよ。調べはついているのよ、瀬川くん。鈴谷恭也がいるわよね?あの子をマスコットに仕立てるわよ」


そう言った姫宮さんに久々の笑みが浮かぶ。彼女はチラリと唇を舐めた。


鈴谷恭也って・・・いや、無理だろそれ?


クラスでの彼の姿を思い浮かべて俺は一瞬で断定した。


だって鈴谷恭也は・・・


「まぁ詳しい話は明日ってことで?」


そう椿千里がそう発言した事で、今日はお開きにする事になった。俺は不本意ながらも了解する。


今日のところは時間差で帰る事になり、順番は俺からだ。


挨拶もそこそこに、2人と別れてからは、気持ちを少し急かして家路につく


家の前までたどり着くと、中から洩れる灯りにホット息をついた。


玄関を開けるとすぐに、東城初子に出迎えられた。


「あらあら透さん、お帰りなさい!ご飯はもう出来てますよ」


「ただいま。今日、何?」


鞄を預かる申し出を丁寧に断りながら、今晩の献立を確認する。


「今日はホタテのアスパラ炒めと、鮭のムニエルと、それと・・・あっ!」


何か思い出したのか、東城さんはパタパタとスリッパを鳴らしながら食堂へと走っりさってしまった。


俺も靴を脱いでから、ゆっくりと東城さんのあとを追って食堂へと向かう。


「どうしたの?東城さん」


顔を覗かせると、東城初子は冷蔵庫から何やら白を基調とするパッケージの箱を持ってきた。俺の前まで来てそれを示す。


「昼間、奥様から届いたんですよ」


にこにこと笑う東城さんの手元に視線を落とすと、赤い長細いキャラクターが王冠を被り、愉快なポーズをとっていた。


「タラコの王子様?」


俺が印刷されている文字をまんま読むと


「今晩は明太子スパゲッティーです」


と、東城初子は得意げに微笑んだ。