†鑑査委員制度†



「嫌われちゃったかな」


つまりはそうなのだろうと、姫宮さんが消えたラック迷路の入り口を見つめながら言うと、千里くんはわざとらしく小さなため息を落とした。


「いじけてるだけだよあいつの場合。まぁ許してやってよ、悪気は一応ないから」


そう言ってうっすらと笑みを浮かべた。


「うん、悪気がないのは見ていて分かるよ。むしろ昨日から僕が姫宮さんを勝手に怒らしていると言うか・・・」


「おぉ、人がいいな透くんは」


椿千里の物言いに適度に謙遜して、「いやいや・・・」と断りを入れてから、今日の核心を尋ねる。


「それで僕は、いったい何を?申し訳ない話しなんだけど、この状況事態よく分かってなくて」


「まぁ・・・透くんも一応知っていると思うけど、鑑査員は何事も秘密厳守だろ?俺らが会うのはそれなりにリスキーなんだよ」


椿千里のその一言で、あぁやはり今日訪ねていったのがまずかったかと察した。


「そうだったね・・・ごめん。昨日はあまりにフットワークの軽い会い方に思ったから、あまり危機感がなかったんだ。もしかして・・・放課後訪ねたのも迷惑だったかな?」


「いや、迷惑というか俺は驚いただけだよ。あれなんだよ、そう――」


少し考える素振りを見せた後、言葉を少々選びながら椿千里は話しを続けた。


「昨日のはね、俺らと会ってた時間帯はちょうど職員室で定例会議中だったんだよ。それに部活で校内に残っている奴なんてたかが知れてたし、ミコトも色々注意をはらって透くんに会いに行ったんだと思う」



まぁ俺から言わせればあいつは気にしすぎなんだけど。そう付け加えて軽い調子で千里くんはさらに先を続ける。俺も時折相槌をうつ程度で黙って聞いていた。


「あまり大っぴらに会わないほうが良いには良いんだけど、今日の透くんは仕方がなかったって分かってるよ。約束の取り付けをしてくれようとしてくれたんだし」