曲の終わりを待っていたのか、拍手の合間にやっと鷹夫さんが俺と東城さんに説明する体になってくれた。
「月に1、2回突然現れてはピアノの演奏をしていくんだよ彼ら。私も詳しいことは分からないんだが、ほら初子、この病院のすぐ近くに文化会館があるだろう?」
「えぇありますね」
割れんばかりの喝采に掻き消されそうになる2人の声を捉えながら、俺の中でゆっくりと結びついていく確かなものを感じる。
「そこを基盤に普段は活動しているそうだよ。ここへはさしあたってコモレビさんの気まぐれじゃないかね?おぉ!2人ともご覧なさい。彼が出てきたということは次で最後だ。いつもトリに必ず弾く彼の演奏は私のお気に入りでね、彼の演奏はこれまでのを一掃してしまうような、強烈さがあります。傾聴に値すると思います。ほら――」
あの子だよ。と鷹夫さんの視線の先を追う。人混みを凝らしやっとその人物をとられたと同時に、厳かな重低音が心にずしりとのしかかる。
死者を悼む荘厳なモーツァルトの『レクイエム』
あまりに重厚で濃密な音の渦に透の鼓動は早まる。
「・・・!」
――――今週の土曜日に市民文化会館に・・・
――――楽団コモレビと言う団体が・・・
カチリと音を立てて俺の中で確かに繋がる。
ピアノは武藤先輩が弾いていた。
