今日で夏休みまで後3日足らずとなった。どことなく周りの雰囲気も緩慢しつつある。しかし授業はもちろん6限目まできっちりとある。
そして午前中全ての授業を終えると、俺はぐったりと机に突っ伏しうなだれていた。
「おーい、瀬川」
クラスの誰かしの呼びかけに振り返ると、あぁやっぱ来たのか。
と、半場うんざりとしながら昼飯を手に取り立ち上がった。
声をかける伝言に使われた彼に礼を述べると、廊下へと出る。
「昼を一緒にと思ってな」
そこには夏の陽気に栗色の髪と白い肌を痛々しく映るほど儚げに、淡い薄緑色の瞳を持つ武藤先輩が立っていた。
「先輩、午前中にもすでに4回ほど言いましたが・・・目立つので来ないで下さい」
「まぁそう言うな。ご飯くらい良いだろう?君も今手にしているじゃないか」
「断っても食べるはめになるのが目に見えていたので持ってきたんです。ご一緒するなら別のところに行きましょう」
「何だ、君の教室で食べればいいじゃないか?」
「6回目です。目立つので嫌ですよ」
そう言って俺は渋る武藤先輩を急かしながら歩き始めた。
全く、何でこんな事になったんだか・・・・――――――
「―――僕は決めた。君は今日からピアノ部員だ。僕が入部を許可する」
はっ?
目を点にした俺に先輩はどんどん先走った説明をし出す。
「ピアノ部とは言っても正式には今や僕しかいないのだが・・・少し特殊でね?一応1人でも学校の部活として認定してもらってある。それと君の入部に関していくつか・・・」
「ちょっ、ちょっと待ってください!」
なんだ?と武藤先輩はとぼけたように切り返してきた。
「何で僕がピアノ部とやらに入る事になっているんですか!とにかくお断りします!」
何だ何だピアノ部って!?初めて聞いたぞ!しかも1人って・・・どんな特例中の特例だ!?あんたは王子か何かか!
って・・・自分で言っといて何だか妙にハマってしまった。
人の話を完全に無視して事を進める所とか、それでいて嫌みにならない個性は何だかこの人、めちゃくちゃ王子っぽいぞ。
